6作家競作「決戦!新選組」第1弾 葉室麟氏が語る沖田総司

公開日: 更新日:

■「心に傷を抱いた人斬り沖田を描きました」

 競作のトップを飾るのは、初期のころの新選組をつくったといわれる水戸出身の郷士・芹沢鴨の暗殺事件を題材にした「鬼火」である。主人公の沖田総司と芹沢は新選組と名乗る前の「浪士組」で出会い、内部の主導権争いに巻き込まれていくという物語だ。

「沖田といえば、これまで多くの作品に描かれてきたようにしなやかな強さと儚げな雰囲気の人物像。私の個人的なイメージでは、梶井基次郎のような、ちょっと翳りがあって、レモンのような青春の苦みと、ある種の清新さを持ち合わせているような人物の気がしていました。冷酷無比な人斬りをする一方で、子供たちと無邪気に遊んでいたという史実も残っており、超越的なものを持ちながら普通の青年でもあるという、そのアンビバレントさが沖田の魅力なんですね」

 著者は今回、沖田を描くに当たり、相反する性質を内包する沖田をつくっているものについて、考え尽くしたという。人斬りが子供と戯れるという違和感からハタと気が付いたのは、無垢なものに憧れる人は、心に傷を持っているのではないか……という新しい沖田だった。

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1
    西武フロントの致命的欠陥…功労者の引き留めベタ、補強すら空振り連発の悲惨

    西武フロントの致命的欠陥…功労者の引き留めベタ、補強すら空振り連発の悲惨

  2. 2
    西武の単独最下位は誰のせい? 若手野手の惨状に「松井監督は二軍で誰を育てた?」の痛烈批判

    西武の単独最下位は誰のせい? 若手野手の惨状に「松井監督は二軍で誰を育てた?」の痛烈批判

  3. 3
    巨人・小林誠司の先制決勝適時打を生んだ「死に物狂い」なLINE自撮り動画

    巨人・小林誠司の先制決勝適時打を生んだ「死に物狂い」なLINE自撮り動画

  4. 4
    全国紙が全国紙でなくなる?「新聞販売店」倒産急増の背景…発行部数の激減、人手不足も一因に

    全国紙が全国紙でなくなる?「新聞販売店」倒産急増の背景…発行部数の激減、人手不足も一因に

  5. 5
    花巻東時代は食トレに苦戦、残した弁当を放置してカビだらけにしたことも

    花巻東時代は食トレに苦戦、残した弁当を放置してカビだらけにしたことも

  1. 6
    日本ハムは過去2年より期待できそう 新外国人レイエスが見せつけた恐るべきパワー

    日本ハムは過去2年より期待できそう 新外国人レイエスが見せつけた恐るべきパワー

  2. 7
    大谷はアスリートだった両親の元、「ずいぶんしっかりした顔つき」で産まれてきた

    大谷はアスリートだった両親の元、「ずいぶんしっかりした顔つき」で産まれてきた

  3. 8
    【中日編】立浪監督が「秘密兵器」に挙げた意外な名前

    【中日編】立浪監督が「秘密兵器」に挙げた意外な名前

  4. 9
    WBCの試合後でも大谷が227キロのバーベルを軽々と持ち上げる姿にヌートバーは舌を巻いた

    WBCの試合後でも大谷が227キロのバーベルを軽々と持ち上げる姿にヌートバーは舌を巻いた

  5. 10
    裏金自民に大逆風! 衆院3補選の「天王山」島根1区で岸田首相の“サクラ”動員演説は大失敗

    裏金自民に大逆風! 衆院3補選の「天王山」島根1区で岸田首相の“サクラ”動員演説は大失敗