「若冲」澁澤龍彦ほか著

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 京都・竹中稲荷社の参道で、黙々と石灯籠を写生する男がいた。今や鶏を描かせたら右に出るものはいないと評判の絵師・伊藤若冲だった。10日ほど前から参道に通い、写生する若冲の前を娘が通り過ぎていく。若冲には、彼女が稲荷社の祠官・興信にもてあそばれているのが分かるが、身も心も彼に夢中の彼女は、それに気づいていないようだ。若冲の予見通り、興信にふられた娘・お鶴が慈照寺の池に入水して死ぬ。お鶴の亡霊に悩まされた興信も首をくくる。興信の死の2日後、若冲の図屏風が完成する。(「若冲灯籠」)

 名作「石灯籠図屏風」を題材にしたこの澤田ふじ子の小説をはじめ、評論など、各界の著名人が若冲をテーマに記した作品を集めたアンソロジー。(河出書房新社 740円+税)


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