ISを生む社会的背景は日本も例外ではない

公開日: 更新日:

「『イスラム国』最終戦争」国枝昌樹著

 シリア情勢の変化とともに次第に追い詰められているといわれるIS(イスラム国)。しかし安心はできない――。

 パリの雑誌社が襲撃された「シャルリー・エブド」事件からそろそろ2年。その後、パリ同時多発テロ事件まで、フランスはISを含むイスラム系テロリストの最大の標的になってきた。エジプト、イラク、シリアなどに長く駐在した元外交官の著者は、人権思想の定着しているはずのフランスの「自由・平等・博愛」が、建前に過ぎなくなっている実態を指摘する。

 異人種は「よほどの才覚がなければ弱者のまま」、しだいに不満が鬱積し、軽犯罪を常習する「プチ悪」になる。それがイスラム国のプロパガンダに引っかかって「ローンウルフ」と呼ばれる悪性の隠(はぐ)れテロリストになるのだ。

 他方、伝統的に警察権力の強いフランスは、いっそう「警察国家化」が進みつつある。それゆえ過激派の動きは表面的には沈静化するだろうが、本質は変わらず、たとえイスラム国が殲滅(せんめつ)されてもテロに走る若者たちの存在はなくならないとみる。「イスラム国」は決して別の世界ではない。「西側先進国の中に問題があるからこそ」根絶できないのだ。日本も例外ではないはずだ。(朝日新聞出版 820円+税)

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    立花孝志容疑者を"担ぎ出した"とやり玉に…中田敦彦、ホリエモン、太田光のスタンスと逃げ腰に批判殺到

  2. 2

    片山さつき財務相“苦しい”言い訳再び…「把握」しながら「失念」などありえない

  3. 3

    阪神異例人事「和田元監督がヘッド就任」の舞台裏…藤川監督はコーチ陣に不満を募らせていた

  4. 4

    阪神・佐藤輝明にライバル球団は戦々恐々…甲子園でのGG初受賞にこれだけの価値

  5. 5

    高市首相「世界の真ん中で咲き誇る日本外交」どこへ? 中国、北朝鮮、ロシアからナメられっぱなしで早くもドン詰まり

  1. 6

    “文春砲”で不倫バレ柳裕也の中日残留に飛び交う憶測…巨人はソフトB有原まで逃しFA戦線いきなり2敗

  2. 7

    阪神・佐藤輝明の侍J選外は“緊急辞退”だった!「今オフメジャー説」に球界ザワつく

  3. 8

    ドジャースからWBC侍J入りは「打者・大谷翔平」のみか…山本由伸は「慎重に検討」、朗希は“余裕なし”

  4. 9

    阪神の日本シリーズ敗退は藤川監督の“自滅”だった…自軍にまで「情報隠し」で選手負担激増の本末転倒

  5. 10

    古川琴音“旧ジャニ御用達”も当然の「驚異の女優IQの高さ」と共演者の魅力を最大限に引き出すプロ根性