キモかわいい「飛び出しくん」を地域別で紹介

公開日: 更新日:

「日本 飛び出しくん図鑑」 関将著

「飛び出しくん」とは、「飛び出し注意」の標語を添えて、道端に置かれた人形や看板状のアレのことだ。本書は音楽家の著者が、全国各地で出合った「飛び出しくん」を紹介した、面白ビジュアルムック。

 東日本大震災を機に、全国を回るライブツアーを始めた著者は、車で移動中に東京では見たことのない「あのかわいらしさ、またはキワモノ感あふれる路上の異物」に衝撃を受け、「この強烈なモノたちを記録に残しておきたい」とカメラに収めるようになったという。

 まずは飛び出しくんの「生息数」でも、種類でも群を抜く滋賀県の2大聖地、中山道愛知川宿周辺と守山市播磨田町へ。

 電柱の陰から今にも飛び出しそうに半身だけ乗り出した女の子や、額に汗を流しながら杖を突いて歩くおばあちゃん、リーゼントのヤンキー、死に神、学生服姿のザビエル、ペリー提督、果ては一つ目宇宙人から、前衛アートも真っ青の得体の知れない模様の人間の姿をしたモノまで。飛び出しくんが「男の子」だという思い込みはあっさり覆される。

 公共の設置物とは思えないそのユニークさは、子どもやお年寄りの安全を願う住人たちの熱意の表れだと思われる。

 有馬温泉では、アートイベントの出展作品として作られた、住民たちの顔を使った斬新な飛び出しくんが、そのまま名物となっている。

 発祥地である滋賀県東近江市の担当者の話では、昭和48年の設置後に、交通事故の発生件数が激減したとの記録もしっかりと残っており、飛び出しくんはその役目をきちんと果たしているのだ。

 市井のアートとも呼ぶべき奇想天外の飛び出しくんを地域別に紹介。ノスタルジーあふれるその姿をドライブ中につい探してしまいそうだが、脇見運転にはご注意。(辰巳出版 1400円+税)

【連載】発掘おもしろ図鑑

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    阪神・大山悠輔「5年20億円」超破格厚遇が招く不幸…これで活躍できなきゃ孤立無援の崖っぷち

  2. 2

    織田裕二がフジテレビと決別の衝撃…「踊る大捜査線」続編に出演せず、柳葉敏郎が単独主演

  3. 3

    兵庫県・斎藤元彦知事を待つ12.25百条委…「パー券押し売り」疑惑と「情報漏洩」問題でいよいよ窮地に

  4. 4

    W杯最終予選で「一強」状態 森保ジャパン1月アジア杯ベスト8敗退からナニが変わったのか?

  5. 5

    悠仁さまは東大農学部第1次選考合格者の中にいるのか? 筑波大を受験した様子は確認されず…

  1. 6

    指が変形する「へバーデン結節」は最新治療で進行を食い止める

  2. 7

    ジョン・レノン(5)ジョンを意識した出で立ちで沢田研二を取材すると「どっちが芸能人?」と会員限定記事

  3. 8

    中山美穂さんの死を悼む声続々…ワインをこよなく愛し培われた“酒人脈” 隣席パーティーに“飛び入り参加”も

  4. 9

    巨人今季3度目の同一カード3連敗…次第に強まる二岡ヘッドへの風当たり

  5. 10

    「踊る大捜査線」12年ぶり新作映画に「Dr.コトー診療所」の悲劇再来の予感…《ジャニタレやめて》の声も