白石あづさ
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白石あづさ

日本大学芸術学部卒。地域紙の記者を経て約3年間の世界放浪へと旅立つ。現在はフリーライターとして旅行雑誌などに執筆。著書に「世界のへんな肉」「世界のへんなおじさん」など。

“これは使える”と共感した「社畜技」

公開日: 更新日:

「社畜!修羅コーサク」江戸パイン著 講談社 602円+税

 桜の花が咲くころに甘い恋の話……でも聞けたらいいのだが、年度末に発表される異動に戦々恐々のサラリーマンも多いだろう。次の上司がモンスターだったり、お局さまの席と隣になったり、はたまた自分が北の果てに左遷されたり。

 会社の人間関係に悩む友人たちに「これ読んでみて」と、そっと差し出すのが本書だ。タイトルからしてどうかしている。本家の作者は黙認しているようだが、島耕作とは似て非なる抱腹絶倒の物語だ。

 東京から無法都市「墓多(ハカタ)」に左遷された生真面目なコーサクは、巨大台風の中を有明湾からサガを超え襲いかかるワラスボをかわし歩いて出社する。「あれが都会のビル風と通勤ラッシュで鍛えられた東京のリーマンの動きか! すごか男たい!」と驚嘆する墓多の人々。

 人の鼻毛を抜く横暴なお局さまとして男性社員から恐れられるメスゴリラの明美や消しゴムでできた刺し身を食べさせようとする腹黒い同僚、Fuck山まさはるなど次々と個性的なキャラクターが登場するが、デフォルメされているだけであって、似たような困った人は実際にいるのである。

 濡れ衣を着せられ慣れているコーサクが考えた「社畜謝罪」、会話の成功率が低い上司に仕えた経験をもとに生み出した「社畜リスニング」など、泥水をすすってきたサラリーマンだからこそ編み出せた数々の社畜技で、その場を丸く収めてしまう。ある意味、ヒーローの耕作よりもリアルで共感が湧く。

 もし私が会社員時代、コーサクの「意外と使える」社畜技を知っていたら辞めなかったかもしれない。非常識な相手と対決するのではなく、うまくいなしつつ、味方を増やし職場環境を改善していく。

 モラハラ上司の愚痴を言いながら、しょぼくれていた友人、本書を読み終えると「バカバカしいけどなぜか元気になるね」。ノートルダム清心学園の理事長、渡辺和子さんの著書「置かれた場所で咲きなさい」が話題となったが、それと通じる深い哲学が……というのは言い過ぎか。

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