• facebook  
  • twitter  
  • Facebook Messenger

「さよならの力」伊集院静著

 ベストセラーエッセー「大人の流儀」シリーズ最新刊の本書は、人生で避けては通れない別離がメーンテーマ。

 著者は、20代で17歳だった弟を、30代で27歳だった前妻を失った。悲しみや憤りから、すさんだ精神状態に陥った後、その動揺は、なぜ自分だけがこんな目に遭うのかという感情になり、慰めの言葉さえ腹立たしく感じられるようになったという。幸せのかたちは似かよっているところがあるが、哀切や苦悩はどれひとつ同じものがない。人は、なぜ、自分にだけそれが下りてきたのかと考えがちだが、やがて時間の経過とともに、自分と同じような体験をしている人が、この世には大勢いることが分かってきたという。

 亡き弟の仏壇に今も毎日話しかける老母、死をもって子に最後の教育をした亡父をはじめ、愛犬の死や道半ばで亡くなった書店員、早世した恩人、そして亡き妻と病室の窓から眺めた最後の花火など。故人や大切な人を失った知人らのことをつづりながら、人間は別離した人々が残された人の生の力になる「さよならが与えてくれた力」によって生かされていると語る。

 悲しみや苦悩を抱えて生きる人々に寄り添う一文一文が心にしみる。(講談社 926円+税)

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

最新のBOOKS記事

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    ブームが去って「残念!」…ギター侍・波田陽区さんは今

  2. 2

    学長会見は“ガキの使い” 日大理事長が絶対表に出ない理由

  3. 3

    元財務省・田中秀明氏 官僚の「政治化」が生んだ忖度体質

  4. 4

    石原さとみに未練か “決断できない男”山下智久に心配の声

  5. 5

    日ロ会談は成果ゼロ プーチンに見切られた安倍首相の末路

  6. 6

    遺族の感情逆なで 堀内議員“高プロ”強行採決で大ハシャギ

  7. 7

    TVから消え10年超…小橋賢児さんイベント仕掛人になるまで

  8. 8

    天敵の籠池氏保釈で“劇場”再燃 高まる「6.20会期末解散」

  9. 9

    田中圭「おっさんずラブ」 女性ファン狂喜乱舞の“肉体美”

  10. 10

    テレ朝の刑事ドラマを追撃 “ダークな二宮和也”の心意気

もっと見る