「東京自叙伝」奥泉光著
弘化2(1845)年の大火事で、孤児となった5歳の「私」は、御家人柿崎家の養子となる。安政2年秋、大地震が発生。15歳になっていた私は自分が地震に遭うのは今回が初めてではないと確信する。よく考えると宝永の富士山の大噴火(1707年)の記憶まであった。どうやら私は輪廻転生する自分の前世の記憶が残っているようだ。元服後、柿崎幸緒と名乗る私は、養父の急死で家督を継ぎ、気がふれて「天照大神」と言葉を交わすことができると言い出した養母を利用して金儲けを始める。時代は明治維新へと突入していく。
関東大震災に遭遇する榊春彦から福島原発事故に居合わせた郷原聖士まで、6人にとりついた地霊を主人公に東京の歴史を描く長編小説。(集英社 780円+税)