「追われもの一破獄」金子成人著
八丈島に流刑された元博徒の丹次は、少年時代に身につけた読み書きの能力に助けられ、役人たちの手伝いなどをしながら平穏に暮らしていた。
しかし、新たに島に送られてきた博徒仲間の重次郎から、実家の乾物問屋が店をたたんだと聞き、胸が締め付けられる。聞くと、兄嫁が店をひっかき回して商いが傾き、心労から両親は首を吊り、兄夫婦の行方も分からないという。兄の佐市郎に何が起きたのか、居ても立ってもいられない丹次は、島抜けを決意。半年かかって用意した筏(いかだ)で夜の海にこぎ出す。島伝いに伊豆を目指すが、漁師から聞いていた「黒瀬川」と呼ばれる潮流に翻弄され、意識を失ってしまう。
追っ手の恐怖に耐えながらひたすら江戸を目指す丹次を描く長編時代小説。
(幻冬舎 540円+税)