「歴史のなかの新選組」宮地正人著
史実と虚構が入り乱れる新選組を幕末期の政治史に位置づける新選組論。
新選組を論じる際に、戦前から用いられてきた「勤王対佐幕」という政治史的図式では、事の本質を誤認すると指摘。幕末期の政治過程は、正常期の幕府優位体制への復帰を志向する「将軍譜代結合」政治集団と、幕府を排除しつつ朝廷と諸大名との直接結合を狙う長州や薩摩などの「外様諸藩の政治集団」、そして天皇との結合にのみ幕府の活路が見いだせるとした一橋慶喜と会津藩・桑名藩による「一会桑グループ」という3つの政治集団の複雑で錯綜した政治闘争に他ならないという。その一会桑グループの有能な政治活動家が近藤勇だった。グループと近藤勇の関係に始まる新選組の歴史を解き明かしながら、その実像に迫る歴史ファン必読の書。
(岩波書店 1360円+税)