「札幌誕生」門井慶喜著

公開日: 更新日:

「札幌誕生」門井慶喜著

 幕末から昭和にかけて、極寒の北の大地に新たな近代都市をつくることに挑んだ人がいた。本書は、「札幌」が誕生する過程に立ち会うことになった人々の情熱の物語だ。「家康、江戸を建てる」で、湿地帯を江戸という都につくりかえた家康を描いた著者が、本作ではかつて蝦夷と呼ばれた北海道の地における都市づくりの歴史に挑んだ。

 札幌誕生の背景には、ロシアの脅威があった。米も育たず、畑も痩せ、土着の人以外は住む人はいないと言われたものの、先に住んだもの勝ちになりかねない地域だけに居住の実績を先につくり、ロシアの砦とする必要があったのだ。

 登場するのは、初代開拓判官として佐賀藩からやって来た島義勇、クラーク博士にあこがれて入学した札幌農学校でキリスト教と出会った内村鑑三、和人が北の大地をつくりかえていく姿を目の当たりにしたアイヌの歌人・バチラー八重子、父から受け継いだ農地を小作人に解放した作家の有島武郎、荒ぶる石狩川の治水に人生を懸けた岡崎文吉の5人。開拓、教育、アイヌ、農地、治水と、それぞれの視点から見た札幌の物語が興味深い。 (河出書房新社 2475円)

【連載】木曜日は夜ふかし本

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    (1)長嶋茂雄氏の「逆転巨人入り」は、銚子の料亭旅館の仲居さんの一言から始まった

  2. 2

    「時代と寝た男」加納典明(17)病室のTVで見た山口百恵に衝撃を受け、4年間の移住生活にピリオド

  3. 3

    佐藤輝明&森下翔太の覚醒で阪神「歴史的大記録」達成の予感…実現すれば40年ぶりの快挙

  4. 4

    今秋ドラフトで割食う巨人…“恋人”の創価大・立石正広が「ミスターの後継者」候補と評価急上昇

  5. 5

    長嶋茂雄さんの「まさかの一言」で高級ブランドショップ店員は素っ頓狂な声をあげ目を白黒させた

  1. 6

    北川景子が味わった二度の挫折 仕事の間にロケバス内の猛勉強で明治大商学部に合格した努力家

  2. 7

    三山凌輝がNYライブで復帰もファン真っ二つ…プロデューサーSKI-HIの“1億円頂き男子”擁護は正解か

  3. 8

    「こっちのけんと」の両親が「深イイ話」出演でも菅田将暉の親であることを明かさなかった深〜いワケ

  4. 9

    亡き長嶋茂雄さんの長男一茂は「相続放棄」発言の過去…身内トラブルと《10年以上顔を合わせていない》家族関係

  5. 10

    巨人「松井秀喜監督」は完全消滅か、可能性あるか…恩師・長嶋茂雄さんは誰よりも願っていた