心臓の手術後はなぜ「急性腎障害」が発症しやすくなるのか
心臓手術では、さまざまな合併症に注意しなければなりません。そのうち、比較的頻度の高い術後の重篤な合併症が「急性腎障害」です。かつては急性腎不全と呼ばれていた疾患です。
数時間~数日の間に急激に腎機能が低下して、尿から老廃物を排泄できなくなり、体内の水分量や塩分量などを調節することができなくなります。すると、過剰な水分の蓄積や電解質の異常を招き、心不全をきっかけに生命に関わる重篤な状態になります。一命を取り留めたとしても、一部の患者さんは慢性腎臓病に移行し、人工透析が必要になるケースもあります。
手術で心臓疾患を治したとしても、腎臓に障害が残ってQOL(生活の質)が下がってしまったら、何のために手術をしたのかわからなくなってしまいます。ですから、心臓手術では腎臓の保護に細心の注意を払います。
心臓手術後に急性腎障害を発症する理由はさまざまあります。まずは薬剤による負担です。
手術では、麻酔はもちろん、血圧を維持するための薬や心臓の負担を軽くする薬、予防的な抗生物質など、状況に応じてたくさんの薬剤を使います。腎臓は、体内の老廃物や余剰な塩分だけでなく、体内に入ったほとんどの薬も排泄しています。そのため、腎臓は薬の影響を受けやすく、手術で負担がかかるのです。