オペラ「トスカ」を取り入れた“舞台”ミステリー

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「トスカの接吻」深水黎一郎著 講談社文庫 762円+税

 プッチーニのオペラ「トスカ」は、歌手のトスカと恋人の画家カバラドッシが主人公。カバラドッシは脱獄した友人を助けたために、ローマ市警視総監スカルピアに捕らえられ、処刑されることに。トスカは恋人の助命を嘆願するが、スカルピアは彼女の肉体を要求し、絶望に陥ったトスカはスカルピアを殺めてしまう――。このオペラを物語に巧みに取り入れて、上質のミステリーに仕立てたのが本書だ。

【あらすじ】日本を代表するオペラ演出家、郷田薫の手になる「トスカ」は、第2幕のクライマックスを迎えていた。トスカ役のプリマドンナ、中里可奈子が、スカルピア役のバリトン、磯部太の首筋にナイフを振り下ろすと、鮮血が噴き出し、スカルピアは床に倒れ込む。迫真の演技である。ところが磯部はそのまま起き上がることはなかった。小道具の仕掛けナイフが本物にすり替えられていたのである。

 この、舞台という「開かれた密室」での前代未聞の殺人事件の捜査に当たるのが警視庁捜査1課の海埜刑事。関係者の証言から、事件は極めて計画的なものと判明。だが、いつナイフがすり替えられたのか、ナイフが本物だったのに磯部はなぜ演技を続けたのか、謎は深まるばかり。そこで海埜は甥の芸術フリークの瞬一郎の手を借りて、事件の解決に乗り出す。その矢先、今度は演出家の郷田が風呂場で殺害されてしまう。しかも鏡にはイタリア語で「これがトスカの接吻だ」と書かれていた……。

【読みどころ】本格的なミステリーだが、そこかしこにオペラに関する蘊蓄がふんだんに盛り込まれ、「トスカ」に関する斬新な解釈も披瀝されている。読み終わると、いっぱしのオペラ通になるという余得も。 <石>

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