「博徒の幕末維新」高橋敏著
博徒や侠客の足跡からたどる異色幕末維新史。
嘉永6(1853)年6月8日深夜、甲州竹居村の安五郎ら流人7人が流刑地・新島から島抜け。これまで多くの流人が島抜けを試みたが、ほとんどは捕らえられ、再び世間にその名をとどろかせたのは安五郎ただ一人だという。彼の島抜けが成功したのには訳があった。新島を所轄する韮山代官が、数日前に下田沖に突如現れた黒船への対応に追われていたためだ。
博徒の安五郎を故郷のヒーローに押し上げた当時の甲州の時代背景を解説。さらに安五郎の遺志を継いだ黒駒勝蔵や下総天保水滸伝の張本人・勢力富五郎、武州石原村無宿幸次郎など、アウトローたちの人生を文献史学の手法で明らかにしながら歴史に位置づける。
(筑摩書房 1000円+税)