「熱狂のソムリエを追え!」ビアンカ・ボスカー著 小西敦子訳
著者はテクノロジー関連の記者だったが、偶然耳にしたソムリエコンクールに興味を持ち、調べていくうちにソムリエという仕事の奥深さを知り、安定した職業を投げ捨てて、ソムリエの世界に飛び込む。本書はその1年半に及ぶ体験記。
ソムリエにとって最も必要なのは優れた嗅覚。香水を手放し、香り付きの洗剤、シートタイプの柔軟剤、生のタマネギ、ピリ辛ソース、塩分、リステリン、さらにはコーヒーまでご法度。時間さえあればワインの試飲をしているので、しらふでいるのは1日6時間ほど。試飲していないときでも、シャワー中にシャンプーの匂いを嗅ぎ、ワインの産地を暗唱する。周囲も、味蕾を磨くために岩をなめたり、雨が嗅覚を鈍らすからと気象学を学ぶといったつわもの揃い。接客、ワインの知識も詰め込んで、彼女はついにソムリエ試験に臨む……。
ふだん何げなく飲んでいるワインだが、その奥にはこんな深遠な世界が広がっているかと思うと、味わいも違ってくる。ワインに関する知識も満載。
(光文社 2300円+税)