「村の奇譚里の遺風」筒井功著
平成14年春、著者は埼玉県入間郡で、「サンカ」と呼ばれた無籍・非定住民の一員である松島始(60歳)と、その妹で50代後半の真佐子に出会う。真佐子の話によると、昭和20年代当時、親が蓑の行商と修繕の顧客を求めて歩き回っていたため、幼い頃から県中部域を漂浪する暮らしで、寝ぐらは神社の軒先や、古墳の石室、古墳時代の横穴墓などだった。同業の仲間は30世帯ほどあり、さらに小グループに分かれて行動していたという。
やがて成長した真佐子はキャバレー勤めを経てそば屋で働くうちに男性を紹介され結婚。実は夫となった男性も東北北部の蓑作り村出身だった。
サンカほか、石風呂、葬送儀礼、猿まわしなど、
民俗文化を研究する著者が日本各地を歩き、折々に見聞きした奇譚13話を紹介する。
(河出書房新社 1850円+税)