「不敗のドキュメンタリー」土本典昭著

公開日: 更新日:

「水俣―患者さんとその世界―」など多くの記録映画を世に送り出した映像作家のエッセー集。

 1970年発表の「水俣ノート」と題された一文では、撮影のため水俣病多発地帯の部落に暮らした日々がつづられる。氏はその5年前にテレビのドキュメンタリー番組で水俣を取材。今回は、かつて「迫り得なかった一つの課題へのもう一たびの試みである」のだが、そのきっかけとなったのが患者の松永久美子さんだった。口も手も動かせず無反応の彼女にカメラを向けた時、「なぜ? 何のために? どの地点に立って撮っているのか?」という問いを彼女自身から迫られている感覚に襲われたからだ。

 そのほか、「映画と現実とのかかわりについて」など、自らの仕事と思索の一端を明かしながら語られる映画論。

(岩波書店 1320円+税)

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    安青錦の大関昇進めぐり「賛成」「反対」真っ二つ…苦手の横綱・大の里に善戦したと思いきや

  2. 2

    横綱・大の里まさかの千秋楽負傷休場に角界から非難の嵐…八角理事長は「遺憾」、舞の海氏も「私なら出場」

  3. 3

    2026年大学入試はどうなる? 注目は公立の長野大と福井県立大、私立は立教大学環境学部

  4. 4

    東山紀之「芸能界復帰」へカウントダウン着々…近影ショットを布石に、スマイル社社長業務の終了発表か

  5. 5

    「総理に失礼だ!」と小池都知事が大炎上…高市首相“45度お辞儀”に“5度の会釈”で対応したワケ

  1. 6

    大関取り安青錦の出世街道に立ちはだかる「体重のカベ」…幕内の平均体重より-10kg

  2. 7

    日中対立激化招いた高市外交に漂う“食傷ムード”…海外の有力メディアから懸念や皮肉が続々と

  3. 8

    義ノ富士が速攻相撲で横綱・大の里から金星! 学生相撲時代のライバルに送った痛烈メッセージ

  4. 9

    同じマンションで生活を…海老蔵&米倉涼子に復縁の可能性

  5. 10

    独立に成功した「新しい地図」3人を待つ課題…“事務所を出ない”理由を明かした木村拓哉の選択