「外国人労働者・移民・難民ってだれのこと?」内藤正典著

公開日: 更新日:

 昨年末、多くの問題点を残しながら、外国人労働者の受け入れを拡大する出入国管理法改正案が成立、この4月から施行された。一口に「外国人労働者」といっても、その人がずっと日本に住み続け家族と一緒に定住している場合は「移民」とされる。また国籍取得と帰化とは別で、おのおの権利・義務が異なる。そこへさらに「難民」となれば、また別の定義が必要となる。本書はこれらの言葉の違い、日本政府の受け入れ政策の変遷等を具体的に解説しつつ、今後増大するであろう外国人労働者とどのように接していけばいいのかを示す。

 問題は、日本政府が表向きは外国人労働者を受け入れないといいながら、手を替え品を替え実質的に外国人労働者を増やしてきたことで、この表と裏との乖離がさまざまな問題を生んでいる。また、国民自身も民族意識が強く外国人とのフラットな関係を築きにくいことも指摘。そこで同じく民族意識の強いドイツの例を挙げながら、今後どのような問題が起こり得るのかを示唆する。

 著者のいうように、やってくるのは「労働力」ではなく「人」だという大原則を忘れてはならないだろう。

(集英社 1600円+税)

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    松任谷由実が矢沢永吉に学んだ“桁違いの金持ち”哲学…「恋人がサンタクロース」発売前年の出来事

  2. 2

    ヤクルト「FA東浜巨獲得」に現実味 村上宗隆の譲渡金10億円を原資に課題の先発補強

  3. 3

    どこよりも早い2026年国内女子ゴルフ大予想 女王候補5人の前に立ちはだかるのはこの選手

  4. 4

    「五十年目の俺たちの旅」最新映画が公開 “オメダ“役の田中健を直撃 「これで終わってもいいと思えるくらいの作品」

  5. 5

    「M-1グランプリ2025」超ダークホースの「たくろう」が初の決勝進出で圧勝したワケ

  1. 6

    出家否定も 新木優子「幸福の科学」カミングアウトの波紋

  2. 7

    福原愛が再婚&オメデタも世論は冷ややか…再燃する「W不倫疑惑」と略奪愛報道の“後始末”

  3. 8

    早大が全国高校駅伝「花の1区」逸材乱獲 日本人最高記録を大幅更新の増子陽太まで

  4. 9

    匂わせか、偶然か…Travis Japan松田元太と前田敦子の《お揃い》疑惑にファンがザワつく微妙なワケ

  5. 10

    官邸幹部「核保有」発言不問の不気味な“魂胆” 高市政権の姑息な軍国化は年明けに暴走する