結局、西洋人には「イスラムの教え」がわかってない。だからテロも終わりが見えないのではないか。

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「イスラームとの講和」内藤正典、中田考著

 イスラム社会を専門とする学者2人の対論集。出発点はテロの被害者とされるフランスが、歴史的に見ればかつて中東地域を勝手に分割した加害者側だったということ。1916年、オスマン帝国に対して英仏が仕掛けた「サイクス・ピコ協定」は中東から北アフリカにかけての地域を直線で分割した、西欧列強の暴力そのものだったのだ。

 フランスは「自由、平等、博愛」を国是にかかげているが、博愛(フラテルニテ)の意味は「同志愛」、それも「一つの組織に属して兄弟の契りを交わす」という意味に近い。つまり「身も心もフランスに捧げて同化すれば、フランス市民として平等に愛してあげるけれど、少しでも違う行動をするなら受け入れない」という考え方なのである。

 EUは「自由、民主主義、法の支配、マイノリティーの権利を含む人権の尊重」を掲げてきたが、いまやヨーロッパを一つに統合するのは誰の目にも無理な話。アメリカの中東介入も場当たりであてにならない。イスラム神学の発想や価値観を踏まえてISやイスラム社会との講和の可能性を説いている。(集英社 760円+税)

「コーランの読み方」ブルース・ローレンス著、池内恵訳

「イワシの頭も信心から」が決まり文句の日本人は宗教といえば「こころ」の選択と思っているが、イスラムは違う、と本書の訳者。人間がどう感じるかに無関係に「絶対の力を持つ神が人間に命令」し「人間はそれを信じて生きていく以外に選択肢はない」のだ。おそらくそれはイスラムが砂漠の宗教だからだろう。

 全体は5部構成。1部は若き日のムハンマド(宗祖マホメット)が信仰にめざめる過程をたどる。2部はムハンマドの口伝にもとづくコーランの解釈教義がいかに成立したか。3部ではコーランの拡大解釈が広まった中世、4部ではアジアへの伝播(でんぱ)、そして5部ではアメリカの黒人社会への広まりまでをたどる。

 いわばイスラム思想の世界史である。(ポプラ社 820円+税)

「イスラーム神学」松山洋平著

 対テロ戦争の激化にともなって初めて、イスラム教ではスンニ派とシーア派が2大宗派だということを知った向きも少なくないだろう。本書はイスラム教徒のおよそ9割をしめるといわれる多数派のスンニ派(本書では「スンナ派」)の教義を中心としたイスラム神学の研究書。

 どの宗教にも宗派の分裂や対立はあるが、それが激しいのがイスラム。何しろムハンマドは「わたしの共同体は73の派に分裂する。一派を除き、彼らすべては火獄に入る」と言い残したというから争いのタネをまいたようなものだが、だからといって他派の根絶を主張したわけでもないらしい。

 砂漠の宗教の奥深さを実感させる大著。(作品社 2700円+税)

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