「ゆびさきたどり」花房観音著
鈴香は、初めて体を許した男に従って、生まれ育った里を出る。親ほども年齢が離れた男の「愛している」という言葉は、鈴香にとって魔法の言葉だった。
年齢を偽り風俗店で働き始めた鈴香だが、やがて、自分が男にとって金を稼ぐ道具に過ぎないことに気づき、別の男と出奔。愛しているという言葉と、優しいふりをすることで、人の心を手に入れられると学んだ鈴香は男の体を喜ばす技術を武器にして生きていく。40歳を過ぎ、老いを感じた鈴香は客だった男と結婚。しかし、相手が故郷に戻り老親との同居を考えていることを知り、同じ社宅に暮らす別の男と逃げ出す。(「桜の里」)
ほかに、引退したバーのママと10年ぶりに訪ねてきた年下の愛人との一夜を描く「枯れ菊」など5編を収録した欲情短編集。 (新潮社 490円+税)