「ニクソンのアメリカ」松尾文夫著

公開日: 更新日:

 トランプ本は世に数あれど中身はどうも腰折れぎみ。報道界もどうやら「トランプ疲れ」らしい。本書は50年も前のニクソン政権について同政権の最末期に書かれた本の増補改訂版。なんだ、古い本かというのは早計。著者は共同通信の著名なベテラン特派員。定年後も現役ジャーナリストとして鋭い指摘や論点を披歴してきた。本書も旧著の構成を大幅に修正し、あらたに付章「トランプとニクソン」を加えたリニューアル版だ。

 自己顕示の塊のようなトランプに対して、ニクソンは劣等感の権化。しかし、両者は国家元首としての不安定性、社会の亀裂を利用した政局運営、頭越し外交など「ショック」を好むことの3つで大いに共通するという。周囲を信頼せず、メディアを敵に回し、疑心暗鬼にさいなまれたニクソンと、閣僚を信頼せず、次々に更迭しながら、「フェイクニュース!」と決めつけるトランプは確かによく似ているのだ。

 著者は19年2月、出張先のニューヨークで客死した。先達の鋭い目に学ぶのは今だ。

(岩波書店 1620円+税)

【連載】本で読み解く激動の世界情勢の行方

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    N党・立花孝志氏に迫る「自己破産」…元兵庫県議への名誉毀損容疑で逮捕送検、巨額の借金で深刻金欠

  2. 2

    高市内閣は早期解散を封印? 高支持率でも“自民離れ”が止まらない!葛飾区議選で7人落選の大打撃

  3. 3

    箱根駅伝は「勝者のノウハウ」のある我々が勝つ!出雲の7位から良い流れが作れています

  4. 4

    女子プロレス転向フワちゃんいきなり正念場か…関係者が懸念するタレント時代からの“負の行状”

  5. 5

    高市首相「午前3時出勤」は日米“大はしゃぎ”会談の自業自得…維新吉村代表「野党の質問通告遅い」はフェイク

  1. 6

    歪んだ「NHK愛」を育んだ生い立ち…天下のNHKに就職→自慢のキャリア強制終了で逆恨み

  2. 7

    我が専大松戸は来春センバツへ…「入念な準備」が結果的に“横浜撃破”に繋がった

  3. 8

    学歴詐称問題の伊東市長より“東洋大生らしい”フワちゃんの意外な一面…ちゃんと卒業、3カ国語ペラペラ

  4. 9

    村上宗隆、岡本和真、今井達也のお値段は?米スカウト&専門家が下すガチ評価

  5. 10

    自死した元兵庫県議の妻がN党・立花孝志党首を「名誉毀損」の疑いで刑事告訴…今後予想される厳しい捜査の行方