「ちょい空腹がもたらすすごい力」石原結實著

公開日: 更新日:

 長寿大国の日本だが、100歳以上の人が増え続けている一方、55歳以下の“若死に”も増加している。その要因のひとつとして、医師である著者は「空腹を経験したかどうか」を挙げている。

 昭和初期までに生まれた日本人の多くは、戦争などさまざまな事情から空腹を余儀なくされた。2000年、この空腹こそが健康長寿に役立つことを、マサチューセッツ工科大学のL・ギャラン教授が明らかにしている。生物が飢餓状態になると細胞の老化を防いで寿命を延ばす働きを持つ「サーチュイン(sirtuin=長寿)遺伝子」が目覚める。そして、老化や病気の元凶物質とされる活性酸素の攻撃から、細胞や遺伝子を守ってくれることが分かったのだ。

 逆に、満腹時ほど免疫力は低下するのだという。血液中に糖や脂肪が飽和していると、それを食べる白血球も満腹状態となり、外来の細菌や体内で発生したがん細胞などの有害物質を食べようとしないためだ。

 むしろ、空腹で血液中にも栄養素が不足している時の方が、白血球も空腹となって外敵をむさぼり食う。つまり、免疫力がアップするわけだ。

 しっかり食べないと便の出が悪くなって体に悪いと一般的には思われているだろう。しかし、食べないことで胃への血流が少なくて済む分、大腸や腎臓、膀胱(ぼうこう)など排泄臓器への血流が良くなる。そして代謝が活発になり、排便・排尿・発汗が促進されるという。

 本書では、朝食代わりにジューサーで作ったニンジン・リンゴジュースを飲む朝食抜き断食法や、朝から夜まで、このジュースと黒糖入りショウガ湯のみで過ごす1日断食の方法などを紹介。空腹状態をつくりだすことで病気を退け、寿命を延ばすヒントを伝授している。

(ワニブックス 1100円+税)

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    ドジャース佐々木朗希に向けられる“疑いの目”…逃げ癖ついたロッテ時代はチーム内で信頼されず

  2. 2

    ドジャース佐々木朗希の離脱は「オオカミ少年」の自業自得…ロッテ時代から繰り返した悪癖のツケ

  3. 3

    注目集まる「キャスター」後の永野芽郁の俳優人生…テレビ局が起用しづらい「業界内の暗黙ルール」とは

  4. 4

    柳田悠岐の戦線復帰に球団内外で「微妙な温度差」…ソフトBは決して歓迎ムードだけじゃない

  5. 5

    女子学院から東大文Ⅲに進んだ膳場貴子が“進振り”で医学部を目指したナゾ

  1. 6

    大阪万博“唯一の目玉”水上ショーもはや再開不能…レジオネラ菌が指針値の20倍から約50倍に!

  2. 7

    ローラの「田植え」素足だけでないもう1つのトバッチリ…“パソナ案件”ジローラモと同列扱いに

  3. 8

    ヤクルト高津監督「途中休養Xデー」が話題だが…球団関係者から聞こえる「意外な展望」

  4. 9

    “貧弱”佐々木朗希は今季絶望まである…右肩痛は原因不明でお手上げ、引退に追い込まれるケースも

  5. 10

    備蓄米報道でも連日登場…スーパー「アキダイ」はなぜテレビ局から重宝される?