「空芯手帳」八木詠美著

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 課長が「柴田さん、まだ片付いていないみたいなんだよ、商談スペースのコーヒーカップ」と言って自席に戻った。私は「今妊娠していて。コーヒーのにおい、すごくつわりにくるんです」と言った。こうして私は“妊娠”した。人事課に出産予定日を聞かれて、適当に来年の5月中旬と答えたので、今は妊娠5週目ということに。

 体調が安定するまで定時上がりにしてもらったら、電車が混んでいて、5時すぎに退勤する人が多いのに驚いた。「おなかに赤ちゃんがいます」キーホルダーを駅でもらってバッグに付けた。13週目に来てはいけないものが来たので、気づかれないように一般客も使う1階のトイレに行く。

 女だから引き受けなくてはならない雑用やセクハラにキレて、未婚なのに妊娠を装った女性の虚実の日々を描く。

(筑摩書房 1400円+税)

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