「小麦の法廷」木内一裕著

公開日: 更新日:

 主人公は、司法修習を終えたばかりのフリーの新米弁護士・杉浦小麦。弁護士事務所に所属していない小麦は、自力で仕事を開拓するほかなく、相続がらみの人探しの仕事をするしかない状況になっていた。

 そんなある日、ある傷害事件の国選弁護人の仕事が舞い込んでくる。目撃者の証言もある上に被告人はすでに罪を認めているとあって、初めて扱う刑事事件にぴったりの比較的簡単な仕事だと思って引き受けた小麦だったが、その被告人が同日に別の場所で起きた殺人事件にかかわっている疑いがあることがわかってくる。アリバイづくりのためになされた偽装事件を弁護しているのではないかという疑いが膨らむなか、小麦は難しい判断を迫られることになるのだが……。

 2013年に原作が映画化された「藁の楯」で小説家デビューして以来、根強いファンを持つ著者の最新作。レスリング競技の元オリンピック候補者という経歴から一転弁護士になったばかりの主人公が、司法の穴をついて悪事をごまかそうと企む一派にどう挑むかが読みどころ。最悪の事態を切り抜ける女性弁護士の奮闘ぶりが頼もしい。

(講談社 1500円+税)

【連載】週末に読みたいこの1冊

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    ドジャース佐々木朗希に向けられる“疑いの目”…逃げ癖ついたロッテ時代はチーム内で信頼されず

  2. 2

    ドジャース佐々木朗希の離脱は「オオカミ少年」の自業自得…ロッテ時代から繰り返した悪癖のツケ

  3. 3

    備蓄米報道でも連日登場…スーパー「アキダイ」はなぜテレビ局から重宝される?

  4. 4

    上白石萌音・萌歌姉妹が鹿児島から上京して高校受験した実践学園の偏差値 大学はそれぞれ別へ

  5. 5

    “名門小学校”から渋幕に進んだ秀才・田中圭が東大受験をしなかったワケ 教育熱心な母の影響

  1. 6

    大阪万博“唯一の目玉”水上ショーもはや再開不能…レジオネラ菌が指針値の20倍から約50倍に!

  2. 7

    今秋ドラフト候補が女子中学生への性犯罪容疑で逮捕…プロ、アマ球界への小さくない波紋

  3. 8

    星野源「ガッキーとの夜の幸せタイム」告白で注目される“デマ騒動”&体調不良説との「因果関係」

  4. 9

    女子学院から東大文Ⅲに進んだ膳場貴子が“進振り”で医学部を目指したナゾ

  5. 10

    “貧弱”佐々木朗希は今季絶望まである…右肩痛は原因不明でお手上げ、引退に追い込まれるケースも