「権力は腐敗する」前川喜平著/毎日新聞出版

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 文部科学省で官僚のトップである事務次官をつとめた前川喜平氏による安倍晋三前政権と菅義偉現政権に対する厳しい批判本だ。

<かつて、腐敗した権力は革命や戦争といった暴力でしか打倒できなかった。代議制民主主義が確立した今日の日本では、腐敗した権力は選挙によって平和裏に倒されるはずだ。しかし安倍・菅政権は、あらゆる手段を使って腐敗を隠蔽してきた。威勢のいい言葉や耳触りのいい言葉で国民を騙し、派手なお祭り騒ぎで国民の目をくらまし、敵でない者を敵だと国民に思い込ませて国民の目を逸らす。官僚には文書の廃棄・改竄や虚偽答弁を強い、メディアには「公平性」の名のもとに政権批判を封じて、「臭いものに蓋」をする。この政権からは強烈な腐臭が漂っているのだが、あまりにも多くの人たちが嗅覚を麻痺させられている。かくして腐った政権はいつまでも続く>

 国民の臭覚は麻痺していない。政権交代が起きて現在の野党が権力を握っても大混乱が起きるだけだと思っているから現政権を消極的に支持しているのだと思う。政権交代の受け皿になる保守・中道勢力の政党が不在であることが現下日本政治の構造的欠陥と思う。

 2015年10月に発出された文部科学省通知「高等学校等における政治的教養の教育と高等学校等の生徒による政治的活動等について」で教師の政治的中立性が求められたことについて前川氏は、<授業の中で自分の政治的見解を示すなと言うだけでなく、学校の外でも不用意に自分の政治的立場が生徒に影響しないようにせよと言っているのだ。これでは教師は「偏向」と非難されることを恐れて、政治教育そのものを避けることになりかねないし、自ら集会に参加したりSNSで政治的主張を発信したりすることもためらうことになりかねない>と批判する。

 しかし、高校生は知識の点では大人と対等でも社会的経験が足りない。革命政党を支持する教員が、自らが絶対に正しいと信じている政治観を生徒に押しつけるような事態が生じないようにすることは、子どもの未来の可能性を狭めないために不可欠と思う。

 ★★★(選者・佐藤優)


(2021年9月2日脱稿)

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