プチ鹿島(時事芸人)

公開日: 更新日:

1月×日 春に書籍を3冊出すことになった。ジャンルは違えど、この5年くらいの活動があらためて形になるから嬉しい。作業で忙しい日々だが読みふけってしまう本があった。まずは中国新聞「決別 金権政治」取材班著「ばらまき 河井夫妻大規模買収事件 全記録」(集英社 1760円)。自民党から河井側に出たあの1億5千万円はどんなカネだったのか。取材班にはある「スジ読み」があった。地元で取材すると「新札だった」という証言が相次いだという。これは何を意味するのか……。地元紙の意地を味わえる内容だ。「対雑誌」「対中央」というテーマも感じた。

 選挙といえば和田靜香さんの「選挙活動、ビラ配りからやってみた。『香川1区』密着日記」(左右社 1760円)も面白かった。和田さんは音楽・相撲ライターだがアルバイトもして最低賃金で働いてきた。将来のことを想像したら不安で仕方ない。ではどうすればいいのかと国会議員・小川淳也に質問をぶつけてみた。それが前作の「時給はいつも最低賃金、これって私のせいですか? 国会議員に聞いてみた。」である。丸腰だったが勉強して問題を論じられるようになっていくあたり読者も一緒に学び、ワクワクもできた本だった。

 今回は小川氏が選挙を迎えたので選挙戦の密着日記なのだ。といっても休みたいときは休む。むしろなぜ皆は休まないの? などの素朴な疑問の提示から「確かにそうだ」と考えさせていく回もある。和田さんの「平熱視点」は世の中全体が裸の王様みたいなことに気づく。すごい書き手です。

 尾中香尚里著「安倍晋三と菅直人 非常事態のリーダーシップ」(集英社 1034円)は、原発事故とコロナ禍という大きな危機に臨んだリーダーの比較論。どう展開していくのだろうと思ったが、菅直人氏が危機を「大きくみた」のに対し、安倍氏は総じて危機を「小さくみた」。つまり過小評価したのではという論考などグイグイ読ませる。他にも「国民の権利と義務をどう扱ったか」などテーマのしぼり方がわかりやすくタメになる。コロナの時系列のおさらいにもなった。

【連載】週間読書日記

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1
    日本球界今オフを襲うポスティング地獄…“予備軍”もゴロゴロ、空洞化ますます加速

    日本球界今オフを襲うポスティング地獄…“予備軍”もゴロゴロ、空洞化ますます加速

  2. 2
    佐々木朗希とのただならぬ関係…陰で糸引く「黒幕」は大船渡高時代の韓国遠征まで追いかけた

    佐々木朗希とのただならぬ関係…陰で糸引く「黒幕」は大船渡高時代の韓国遠征まで追いかけた

  3. 3
    ついに国民年金65歳まで納付案が…政府がヒタ隠す「年金積立金250兆円」という都合の悪い真実

    ついに国民年金65歳まで納付案が…政府がヒタ隠す「年金積立金250兆円」という都合の悪い真実

  4. 4
    キムタクを縛り続ける《公称176cm》のデータ…「Believe」番宣行脚でも視聴者の関心は共演者との身長比較

    キムタクを縛り続ける《公称176cm》のデータ…「Believe」番宣行脚でも視聴者の関心は共演者との身長比較

  5. 5
    裏金自民に大逆風! 衆院3補選の「天王山」島根1区で岸田首相の“サクラ”動員演説は大失敗

    裏金自民に大逆風! 衆院3補選の「天王山」島根1区で岸田首相の“サクラ”動員演説は大失敗

  1. 6
    「白鵬の弟子」押し付け合い勃発! あちこちから聞こえる師匠譲りの不穏な評判

    「白鵬の弟子」押し付け合い勃発! あちこちから聞こえる師匠譲りの不穏な評判

  2. 7
    キムタクと9年近く交際も破局…通称“かおりん”を直撃すると

    キムタクと9年近く交際も破局…通称“かおりん”を直撃すると

  3. 8
    キムタク主演ドラマがまさかの1ケタ…“考察”慣れしすぎて王道スポ根が楽しめない?

    キムタク主演ドラマがまさかの1ケタ…“考察”慣れしすぎて王道スポ根が楽しめない?

  4. 9
    全国紙が全国紙でなくなる?「新聞販売店」倒産急増の背景…発行部数の激減、人手不足も一因に

    全国紙が全国紙でなくなる?「新聞販売店」倒産急増の背景…発行部数の激減、人手不足も一因に

  5. 10
    大谷は徹底した個人主義、思考回路も米国人…ゴジラ松井とはメンタリティーに決定的差異

    大谷は徹底した個人主義、思考回路も米国人…ゴジラ松井とはメンタリティーに決定的差異