特殊部隊の内幕

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「ネイビーシールズ 特殊作戦に捧げた人生」ウィリアム・H・マクレイヴン著 伏見威蕃訳

 英大衆紙によるとロシアによるウクライナのゼレンスキー大統領暗殺計画が、ことごとく英国特殊部隊に阻止されているという。



 英紙報道では英特殊空挺部隊SASが70人でゼレンスキーの警護と、いざというときの救出準備をしているという。そのパートナーが米海軍特殊部隊ネイビーシールズ。規模も150人とこちらのほうが実は主体。オバマ政権時代、ウサマ・ビンラディンの隠れ家を襲撃・殺害したことで大いに知られたあの特殊部隊だ。本書は部隊の最初期からの隊員で最後は海軍大将にまで上り詰めた功労者の回想録。

 米軍で猛者も音を上げる訓練といえば海兵隊が有名だが、ネイビーシールズは海兵隊員が転籍しても入隊したがる栄光と鉄の規律の集団だという。著者は士官学校卒ではなくテキサス大在学中に予備役士官訓練課程を経て海軍に入隊した身だから、あえて新設部隊でパイオニアの道を選んだともいえよう。その集大成が2011年のビンラディン追討作戦。その作戦指揮官としてホワイトハウスと渡り合い、他方で絶対に失敗の許されない現場を任せる精鋭たちを選任する。本人はアフガンのバグラム空軍基地から緊密に指揮をとっていた。その逐一を誇らしく振り返っている。

 著者近影を見ると思いのほか細面でタフガイとは裏腹のタイプ。特殊部隊員は単なる暴れん坊ではないことがわかる。

(早川書房 3410円)

「米海軍特殊部隊 伝説の指揮官に学ぶ究極のリーダーシップ」ジョッコ・ウィリンクほか著 長澤あかね訳

 ひところ会社経営者の間で米海兵隊の本がブームになった。その理由はアメリカの海外派兵で先陣を切る海兵隊に、期待される組織の機動力の手本を見ようとしたからだ。それが近ごろではネイビーシールズに代わっているらしい。著者ふたりは部隊の先輩後輩の間柄で、ウィリンクが指揮官をつとめたイラクの戦場で小隊指揮官だったのがバビンだったという。その経験を生かし、退役後はコンサルタント会社をふたりで立ち上げ、「チームで動く」コツを企業の現場研修などでも伝授している。

 本書では過去の作戦での経験などの実例を紹介し、そこから企業人にも役立つ教訓をうまく引き出している。叩き上げの下士官から将校になった経歴だけに実践的な話が豊富。

(CCCメディアハウス 2200円)

「特殊部隊 VS. 精鋭部隊」荒谷卓、二見龍著

 自衛隊も世界の潮流に乗り遅れまいと特殊部隊の創設に乗り出したのが約20年前。手本は米陸軍のグリーンベレーやデルタフォースだったという。本書は陸上自衛隊で創設された特殊作戦群の初代群長と、猛者で鳴らす第40普通科連隊の元連隊長が胸襟を開いてとことん語り合った記録。

 競い合いの舌鋒も鋭く、「特戦群相手に互角かそれ以上の戦いができる」と40連隊長がいえば、特戦群長は「武器も装備もすべて一般部隊とは異なる。特戦群は日本で唯一無二の部隊」と胸を張る。部隊を強くするための心得、指揮官に必須の条件、実戦型訓練の重要性なども明らかにされる。

(並木書房 1540円)

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