「妖(あやかし)の絆」誉田哲也著

公開日: 更新日:

 物語は、父親の借金のせいで母親を吉原に連れて行かれた子ども時代の欣治が、妹のたまと家にふたりだけで取り残されるところから始まる。

 ひもじさに泣く妹のために近隣の畑の作物を盗むようになった欣治は、紆余曲折の末に円光寺の住職に引き取られたが、妹とふたりで世話になろうとした矢先、住職からの思いがけない裏切りに遭う。

 一方、女ひとりの道中を襲ってきた怪しげな男たちを簡単に殺して市ケ谷まで歩いてきた紅鈴は、ふと何十年かぶりに円光寺に寄ってみようかと思い立つ。紅鈴はかつてその寺の本堂で寝ているところを若い坊主に見つかり、騒ぎになったためそこの坊主らを皆殺しにしたことがあった。その後、代わりの住職がなかなか来なかったため、かつてすみかにしていたのだ。しかし寺に近づいた紅鈴は、少年が男に襲われているのを察知し闇神の姿に変身する。

妖の華」「妖の掟」に続く、妖シリーズ第3弾。本作は、人の生き血をすすって生きる絶世の美女・紅鈴と、彼女と行動を共にする欣治の運命の出会いにまで遡る。ふたりの固い絆を描いたエピソード・ゼロの物語だ。

(文藝春秋 1980円)

【連載】週末に読みたいこの1冊

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    横浜・村田監督が3年前のパワハラ騒動を語る「選手が『気にしないで行きましょう』と…」

  2. 2

    文春が報じた中居正広「性暴力」の全貌…守秘義務の情報がなぜこうも都合よく漏れるのか?

  3. 3

    マツコが股関節亜脱臼でレギュラー番組欠席…原因はやはりインドアでの“自堕落”な「動かない」生活か

  4. 4

    松井秀喜氏タジタジ、岡本和真も困惑…長嶋茂雄さん追悼試合のウラで巨人重鎮OBが“異例の要請”

  5. 5

    巨人・田中将大と“魔改造コーチ”の間に微妙な空気…甘言ささやく桑田二軍監督へ乗り換えていた

  1. 6

    5億円豪邸も…岡田准一は“マスオさん状態”になる可能性

  2. 7

    小泉進次郎氏8.15“朝イチ靖国参拝”は完全裏目…保守すり寄りパフォーマンスへの落胆と今後の懸念

  3. 8

    渡邊渚“初グラビア写真集”で「ひしゃげたバスト」大胆披露…評論家も思わず凝視

  4. 9

    「石破おろし」攻防いよいよ本格化…19日に自民選管初会合→総裁選前倒し検討開始も、国民不在は変わらず

  5. 10

    大の里&豊昇龍は“金星の使者”…両横綱の体たらくで出費かさみ相撲協会は戦々恐々