「歳時記 夢幻舞台24の旅(トリップ)」髙樹のぶ子著

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 接ぎ木について歌った正岡子規の句を起点に、強く根を張ったシークワーサーの台木に、甘いミカンの穂木を接ぐ植生技術の映像に興味をひかれた著者がふと思い出したのは、小学校の頃のやけに生々しい思い出だった。それは、戦争で父親を亡くした子の家に田畑を耕すためにやって来た亡父の弟の姿。田畑を耕す男のたくましい姿が目につき、やがてその弟がその子の父親になることを知らされるのだが……。(「接ぎ木」)

 現実のようでいて、どこか幻想的で不思議な人間模様を、四季折々の情景と共に紡いだ短編集。

 病気のために中学校に行くこともなく14歳で亡くなった美枝ちゃんを思い出させた教室に迷い込んできた鳥の話「迷鳥」、昔付き合っていた妻子のある男の訃報を聞いた後にその男を騙(かた)る人物から不思議なメールが届き始めた「枯れ葉」など、24編が収録されている。

 物語の舞台は沖縄、ギリシャ、北海道、東京、出雲など場所を限定されているものから、どこともいつとも限定できないような幻想的な設定までさまざま。

 どこか懐かしさと切なさを含んだ風情あふれる物語が味わえる。

(潮出版社 2090円)

【連載】週末に読みたいこの1冊

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