「百万本のバラ物語」加藤登紀子著

公開日: 更新日:

 加藤登紀子の代表曲「百万本のバラ」には、数々の物語があった。本書は、縁あって「百万本のバラ」を歌うことになった著者自らが、この歌の歴史や背景を探りながら、国家に翻弄される人々の人生と、自らの過去との不思議な巡り合わせに思いを馳せたエッセーだ。

「百万本のバラ」の原曲は、ラトビアの子守歌。「マーラが与えた人生」というタイトルで、キリスト教の女神であるマーラに対して、子どもを与えてくれたのになぜ一緒に幸せを運んでくるのを忘れたのかという歌詞になっている。ロシア革命時にロシアから独立したラトビアは、独ソ不可侵条約を期にソ連に侵入され、再びソ連に支配されたのだが、その際「マーラが与えた人生」も歌詞を変えられ、ラブソングに生まれ変わった。

 1943年に中国東北部ハルビン市に生まれた著者が、子どもの頃の満州での敗戦体験や、ロシア人やウクライナ人と深い縁があったことをつづっていく。

「百万本のバラ」の歌で、国境を超えてつながる人々の、ひとりひとりの物語を呼び起こそうとする著者の強い思いが伝わってくる。 (光文社 1760円)

【連載】週末に読みたいこの1冊

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    高画質は必要ない? 民放各社が撤退検討と報じられた「BS4K」はなぜ失敗したのですか?

  2. 2

    「二股不倫」永野芽郁の“第3の男”か? 坂口健太郎の業界評…さらに「別の男」が出てくる可能性は

  3. 3

    気温50度の灼熱キャンプなのに「寒い」…中村武志さんは「死ぬかもしれん」と言った 

  4. 4

    U18日本代表がパナマ撃破で決勝進出!やっぱり横浜高はスゴかった

  5. 5

    坂口健太郎に永野芽郁との「過去の交際」発覚…“好感度俳優”イメージダウン避けられず

  1. 6

    大手家電量販店の創業家がトップに君臨する功罪…ビック、ノジマに続きヨドバシも下請法違反

  2. 7

    板野友美からますます遠ざかる“野球選手の良妻”イメージ…豪華自宅とセレブ妻ぶり猛烈アピール

  3. 8

    日本ハム・レイエスはどれだけ打っても「メジャー復帰絶望」のワケ

  4. 9

    広陵暴力問題の闇…名門大学の推薦取り消し相次ぎ、中井監督の母校・大商大が「落ち穂拾い」

  5. 10

    自民党総裁選の“本命”小泉進次郎氏に「不出馬説」が流れた背景