「田沼と蔦重」早見俊著
「田沼と蔦重」早見俊著
天明4(1784)年3月、日本橋で地本問屋耕書堂を営む蔦屋重三郎は、出入りの戯作者から話題の書物「赤蝦夷風説考」を教えられる。著者は、その書物で蝦夷地の近海に出没してアイヌと交易しているロシアが侵略を狙っているので、蝦夷地の鉱山を開発して産出した金銀銅でロシアと交易し、友好関係を築くべきと説いているという。
そこへ外回りから戻ってきた番頭役の小兵衛が、耳にしたある噂を重三郎に伝える。ある旗本が老中田沼意次の嫡男意知を激しく恨んでいるという。さらに、父親の意次に憎悪を募らせている人物もいるらしい。重三郎は意次の屋敷にいる道鬼に知らせの文を書く。道鬼こそ5年前に獄死したとされる平賀源内だった。
蔦重と意次、源内の「べらぼう」な3人を主人公に描く時代長編。
(新潮社 737円)