著者のコラム一覧
カモシダせぶん書店員芸人

1988年、神奈川県生まれ。お笑いコンビ「デンドロビーム」(松竹芸能)のメンバー。日本推理作家協会会員。現在、都内の書店でも働く現役の書店員芸人。著書に「探偵はパシられる」など。

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「最後のあいさつ」阿津川辰海著

 日刊ゲンダイをお読みの皆さま、はじめまして。連載初回なのでまずは自己紹介を。私は松竹芸能でデンドロビームというお笑いコンビで活動しつつ、書店でも長年働いており2つを合わせた珍妙な肩書「現役書店員芸人」としてさまざまな本を紹介するお仕事を雑誌やテレビでさせてもらっている。この連載でも今書店で並んでる良書を、鮮魚店や青果店の店員さんよろしく「お客さん! いい本入ってますよ!」と熱を持って威勢よく紹介できればと思う。

 私は本を読む、売るだけでなく、書く方もやっている。昨年ミステリー小説を刊行しており、日本推理作家協会にも入会した。この団体は江戸川乱歩が設立し会員には東野圭吾さんや宮部みゆきさんらもいる由緒ある協会だ。ちなみにお笑い芸人で入っているのは僕一人。それぐらいミステリー愛があるので、初回は最近一番グッと来たミステリー小説を紹介したい。まず導入からしてしびれる。

 国民的人気の長期シリーズ刑事ドラマの主演俳優が妻殺しの容疑で逮捕される。ところがその俳優自身が記者会見を開き、妻を殺したのは自分ではなく、真犯人がいると推理を披露する。異例の会見から真犯人の連続殺人犯は逮捕され死刑が執行されるが、数十年後全く同じ手口の殺人事件が発生し、再びその俳優に疑惑の目が向けられる。果たして彼が披露した推理は真実だったのか。

 本書は小説好きにはもちろん「いやぁミステリーはドラマや映画では見るけど小説ではちょっと」と思っている方も絶対楽しめる作品だ。なぜなら本書で描かれている刑事ドラマのオマージュ元はテレビ朝日系の超人気ドラマ「相棒」だからだ。本書の中心人物であるクレバーな俳優も読んでいてあの人に脳内変換される。口調もそっくり。芸能界やドラマ制作の裏側の描写がしっかりしていて楽しめる。ミステリーとしても展開やトリックの書き方にも著者の気迫が感じられる快作だ。参考文献に「あぶない刑事」「古畑任三郎」の名前もあるので刑事ドラマ好きにはたまらないのでぜひ。

 しかし第1回なのにいきなり最終回みたいなタイトルの小説を紹介してしまった……。次週以降もしっかり載っているので気にしていただければありがたい。 (光文社 1980円)

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