「イクサガミ神」今村翔吾著
「イクサガミ神」今村翔吾著
書店の数が減ってきている。こう書いている私も働いていた書店が去年4月に閉店した。が、現在はまた別の書店で働けている、しかも2店舗。前の店の閉店が決まった時SNSで「これからどうしよう……10年以上現役書店員芸人の看板でやってきたのに現役ニート芸人になってしまう……」と嘆いていたら、ある作家さんが声をかけてくれた。その方こそ直木賞作家の今村翔吾さんである。「職場なくなるの大変やろ? 今度神保町に書店出すからもし良かったらそこのオープンスタッフになってよ!」と気さくに誘ってくださったのだ。
小説家が書店? と思った方もいるだろう。実は今村さんは作家業の傍ら、昔に比べて旗色が悪くなっている書店業界をどうにかしたいという強い意志を持っていて、僕に声をかけた時点で大阪と佐賀の書店のオーナーにもなっていた。書店を愛する熱い作家で神保町に開いたのは普通の書店とも違う「シェア型書店」。店にある本棚それぞれを月額で借りたい棚主を募集し、その棚にオーナーが置きたい古本や新刊を入れ、売り上げがオーナーに入っていくシステムの書店だ。普通に誘ってくれただけでもうれしかったが今までにない試みで非常に興味が湧いたので今村さんの下でシェア型書店「ほんまる神保町」で働いている。別の書店さんからもお誘いがあってそことの兼業も全然いいよと言ってくれた。懐が深い。
本書はそんな熱い志を持つ今村さんが魂を込めて書いてきた時代小説シリーズの最終巻だ。時代小説だが、始まりは明治のはじめ、大金を餌に京都に集められた292人の強者たちがデスゲームに巻き込まれ、戦いあいながら東京を目指していく斬新な設定。戦闘シーンの描写も鬼気迫る筆致で、こちらものめり込むように読んでしまう。
今村さんの作品は読みやすさもあって昨今の時代小説では珍しく10代、20代のファンがものすごくついている。もちろん従来の時代小説ファンの層にもしっかり認められているので、私の周りだと女子大学生の後輩芸人から還暦を過ぎた私の父親までとりこにしていた。なんとネットフリックスでもドラマ化が決まっており来月に公開される。ドラマ公開前に原作全4巻一気読みがオススメだ。
(講談社 1001円)