著者のコラム一覧
カモシダせぶん書店員芸人

1988年、神奈川県生まれ。お笑いコンビ「デンドロビーム」(松竹芸能)のメンバー。日本推理作家協会会員。現在、都内の書店でも働く現役の書店員芸人。著書に「探偵はパシられる」など。

公開日: 更新日:

「探偵小石は恋しない」森バジル著

 書店で働き始めてから初めて聞く単語がある。中でも普通に生活して耳なじみがないのが「ゲラ」と「プルーフ」だ。ゲラとは我々お笑い芸人が最も愛するよく笑う人たちを指すゲラではない。出版社から届く発行前の書籍の原稿である。大体が大きめの紙に2ページ分印刷されており、何百枚もの紙の束が、クリップで留められている。これを我々はゲラと呼ぶのだ。

 出版社が推したい新刊がある場合、書店に「ゲラでの先読みどうですか?」と打診し、書店員の感想を発売前に吸い上げ、いいものがあれば帯文やネットでそのコメントを載せる。書店員は読んだ上でどれぐらいの数その書籍を注文するか決める。しっかりとしたお仕事だ。ただ「お得に読める!」だけではない。ちなみに最初に出したもうひとつの単語「プルーフ」は女子が使っているメークのことではなくゲラが紙の束ではなく簡易的に本の形でとじられているもの。

 私もゲラやプルーフを読ませてもらう機会が年に何回かある。慣れてるとはいえ、日々の合間に本を1冊読むのはなかなか時間がかかる。しかも注文書や感想は期日がある。そこそこせかされる読書になって大変なときもある。だが、私が働いている書店の上司は仕事以外のほとんどの時間を読書に使い、なんなら耳でオーディオブックを聞きながら別の書籍を読み両方理解している。この上司の本の目利きは凄く、働いてる書店グループや出版社の中でも一目置かれている。

 今年読んだゲラ、プルーフの中で最も良かった小説が本書である。初めは浮気調査に乗り出す探偵と助手が出てくるコミカルで楽しい小説かと思いきや、途中から怒涛の展開と予想の裏切りが押し寄せてくる。合間に挟まれる古今東西ミステリー作品の小ネタも好感が持てた。ネタバレ厳禁なので内容の説明はこの辺で。著者の森バジルさんは新進気鋭で注目されていたがこの作品で明らかにもう1つ上のステージに上がっている。プルーフでの人気も非常に高く、特設サイトに厳選された書店員さんのコメントが載っている(ちなみに私のも載っている)。

 私も、職場のスーパー上司も、ゲラを読んだ全国の書店員さんが今推しているミステリー、ぜひ。 (小学館 1870円)

【連載】書店員芸人カモシダせぶんの「いい本入ってますよ!」

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    ロッテ前監督・吉井理人氏が佐々木朗希を語る「“返事もしなかった頃”から間違いなく成長しています」

  2. 2

    ロッテ前監督・吉井理人氏が大谷翔平を語る「アレを直せば、もっと良く、170kmくらい投げられる」

  3. 3

    矢沢永吉ライブは『永ちゃんコール』禁止で対策も…B'z『客の大熱唱』とも通じる“深刻な悩み”

  4. 4

    菊池風磨のカウコン演出に不満噴出 SNS解禁でSTARTO社の課題はタレントのメンタルケアに

  5. 5

    阿部監督のせい?巨人「マエケン取り失敗」の深層 その独善的な振舞いは筒抜けだった

  1. 6

    巨人ドラ1岡本和真 本塁打1本「小遣い1万円」に祖父母悲鳴

  2. 7

    「将軍 SHOGUN」シーズン2も撮影開始 2026年は柄本明、平岳大ら海外進出する日本人俳優に注目

  3. 8

    辰己涼介は楽天残留が濃厚 ソフトバンク東浜巨らFA行使“残り物”たちの気になる行方

  4. 9

    新大関・安青錦に追い風? 八角理事長が看破した横綱・大の里「左肩回復遅れ」

  5. 10

    ブルージェイズ岡本和真に「村上宗隆の2倍」の値段がついたカラクリ