「植物少女」朝比奈秋著
「植物少女」朝比奈秋著
美桜が26歳のとき、母が亡くなった。しかし、美桜は生前の母がどんな人だったか知らない。母は美桜を出産時に脳出血を発症し大脳が壊死。病院のベッドで植物状態のまま過ごしてきたのだ。
美桜は物心つく前から、父や祖母に連れられ、病院に通った。幼いとき、美桜はいつも母親の病衣の中に顔を入れて乳首を口に含んだ。母の体は動かないが、母乳は出た。母は口元に食事を運べば自分で咀嚼をしてのみ込むが、目を開けることも語りかけてくることもない。小学生になると、美桜は毎日、ひとりで病室に通い、母やほかの患者の介助をする一方で、母を妹に見立てたりして遊ぶようになった。しかし、何を話しかけても母は返事をしてくれない。
意思疎通ができない母と娘の関係を描いた第36回三島由紀夫賞受賞作。 (朝日新聞出版 836円)


















