「怪死 遺骨と埋葬と殺人の迷宮」ダグラス・プレストン著 棚橋志行訳
「怪死 遺骨と埋葬と殺人の迷宮」ダグラス・プレストン著 棚橋志行訳
刺激的なタイトルとグレーの表紙がホラー的な作品をイメージさせるが、中身はミステリーファンも考古学マニアも楽しめる傑作ノンフィクション。目次を眺めるだけで興味をかき立てられる。
イタリア犯罪史上最凶の連続カップル殺人事件を追った「フィレンツェの怪物」。数百体の人骨の出自を遺伝子分析で解明しようと試みる「ヒマラヤの氷河湖と謎の骸骨」。ソ連時代のロシアで起きた不可解な事件を追う「『死の山』に消えたスキーヤーたち」。アメリカ南西部の先史文明の恐るべき真実を暴く「キャニオンの人喰い人種」……。
著者はアメリカの作家でジャーナリスト。ニューヨークのアメリカ自然史博物館に編集者兼ライターとして勤務した経験もあり、本作には、そのキャリアのすべてが凝縮されている。「ニューヨーカー」「ナショナルジオグラフィック」などの雑誌に寄稿した文章の中から選りすぐった13編を集めたアンソロジー。飽くなき好奇心と、現場に足を運ぶ行動力と、最新科学の知見を駆使して、小説より奇なる事実に迫っていく。
人間が知る限り、地球史上最大の怪死は、恐竜の絶滅だろう。本作の中の一編「恐竜が滅びた日」は、若き古生物学者に焦点を当てて、研究の最前線を描いている。幼いころから骨に魅せられていたロバート・デパルマは、生物大量絶滅の瞬間を記録した地層を発見する。いまから6600万年前、小惑星の衝突が引き起こした巨大津波は、あらゆる生物を押し流し、その残骸を堆積させた。著者はノースダコタ州の発掘現場にデパルマを訪ね、人類史以前の堆積物を目の当たりにする。大小の魚、恐竜の骨や歯、貝殻、植物の種子、木片などの化石が次々に掘り出されていく。この発見に疑義をはさむ研究者もいるが、現在も驚異的な化石の発見が続いているという。「神の岩」とでもいうべき小惑星の衝突によって、地球上の生物は激変した。その進化の末に人類がいる。地球生物のあらゆる死骸の上に、私たちは生きているのだ。その圧倒的な事実の前に立ちすくむ。
(亜紀書房 2970円)


















