「紅白が生まれた日」に戦後復興ドラマで“最高のデキ”の評価
だが、「歌合戦(song battle)は戦争をイメージさせる」と米国が却下。「競い合う」という意味を強め、第1回は「紅白音楽試合」という番組名になった。
「多くの人がラジオを聴けば、より日本人を教育できる」という、米国側の真の承諾理由はゾッとさせられるものだったが、ドラマにはGHQへの批判も含んでいる。
そして、水の江滝子と古川ロッパの司会で始まり、並木路子の役で「リンゴの唄」を熱唱したmiwaのうまさもあって、紅白の再現シーンもよかった。大成功した第1回紅白が終わると、放送局の周りにはラジオを聴いた貧しい民衆が取り囲み、「おもしろかったぞ!」と拍手喝采。復興とその後の成長期を勇気づけた国民的番組がスタートした経緯がよくわかった。
時代が違うとはいえ、今の「紅白」は出場者が大手芸能プロのパワーバランスに左右されたり、バカ騒ぎ的なショーアップが行き過ぎている。その傾向は2時間半くらいだった放送時間が4時間以上と長尺になってから顕著だ。
高視聴率を誇った70年代全盛期のように夜9時からの放送に戻して派手な演出は抑えるか、いっそ原点に戻ってラジオだけにしてみたら、歌の良さが伝わるのではないか。
(作家・松野大介)