大ヒット 吉永小百合が「母と暮らせば」で見せた渾身演技
吉永小百合と二宮和也が出演している「母と暮せば」がヒットしている。予想では興収20億円以上。とくに平日が強い。この1週間は各シネコンではもっとも稼働率が高かった。
今年84歳の山田洋次監督、執念の映画化である。長崎に投下された原爆で亡くなった息子を思いやる母(吉永)のもとに、ある日突然、息子(二宮)が現れた。母は息子とかつての記憶の話を重ねながら、彼と束の間の逢瀬をもつ。
息子を思いやる母の気持ちの凄まじさを描いて、原爆への強い怒りがあふれ出るかのような作品だ。戦後70年の今年、日本映画界はこの「母と暮せば」を送り出したことを誇りに思っていい。
息子を失った母の筆舌に尽くしがたい悲しみが画面いっぱいに広がる。息子は母の幻想として現れるのだが、以降、徐々に母の体力が減退していくのが、実は本作のもっとも重要なところなのだ。
吉永は、病気がちになり、次第に床に伏せる回数が多くなる母を年老いた風情で演じてみせる。これほど老境の姿をさらしたのは女優人生で初めてではないか。