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碓井広義メディア文化評論家

1955年長野県生まれ。慶應義塾大学法学部政治学科卒業。千葉商科大学大学院政策研究科博士課程修了。博士(政策研究)。81年テレビマンユニオンに参加。以後20年、ドキュメンタリーやドラマの制作を行う。代表作に「人間ドキュメント 夏目雅子物語」など。慶應義塾大学助教授などを経て2020年3月まで上智大学文学部新聞学科教授。専門はメディア文化論。著書に「倉本聰の言葉―ドラマの中の名言」、倉本聰との共著「脚本力」ほか。

3.11を風化させない 震災を映像で伝え続ける“テレビの使命”

公開日: 更新日:

連載コラム「TV見るべきものは!!」】

 今週、東日本大震災から5年を迎える。毎年この時期になると、震災関連と呼ばれる番組が各局で放送される。“季節ネタ”などと揶揄する人もいるが、それは違う。あれだけの大きな出来事であり、現在も終わっているとは言えないのに、現地以外ではすっかり風化状態だ。伝え続けることはテレビの使命でもある。

 4日に放送された「消防隊だけが撮った0311 彼らは『命の砦』となった」(フジテレビ系)は、文字通り消防隊が撮影した映像を軸に構成されていた。スタジオだの司会者だのを使わず、映像によって事実を伝えようとする2時間余り。大杉漣のナレーションにも心がこもっていた。

 当日、地元はもちろん、全国規模で動員された緊急消防援助隊員たちが、5000人以上の命を救った。だが、その裏で消防側も281人の犠牲者を出している。まさに決死の救助活動だったのだ。たとえば、陸前高田市の消防団員が撮っていた映像。自身も津波に追われながら、「(津波が)堤防越えた! 逃げろ! 逃げろ!」と市民に呼びかけ続けていた。カメラのスイッチを切る間もなかったからこそ記録されたその映像は、乱れに乱れているが、現場の実態を想像させるには十分だ。

 また、津波だけでなく大火災とも向き合うことになった、宮城県気仙沼市の消防隊からも目が離せなかった。映像の持つ力を生かした震災特番。ぜひ再放送してほしい。
(上智大学教授・碓井広義=メディア論)

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