著者のコラム一覧
碓井広義メディア文化評論家

1955年長野県生まれ。慶應義塾大学法学部政治学科卒業。千葉商科大学大学院政策研究科博士課程修了。博士(政策研究)。81年テレビマンユニオンに参加。以後20年、ドキュメンタリーやドラマの制作を行う。代表作に「人間ドキュメント 夏目雅子物語」など。慶應義塾大学助教授などを経て2020年3月まで上智大学文学部新聞学科教授。専門はメディア文化論。著書に「倉本聰の言葉―ドラマの中の名言」、倉本聰との共著「脚本力」ほか。

高市総務相はまだ「電波停止」発言を撤回していない

公開日: 更新日:

 今年2月、衆院予算委員会で高市早苗総務大臣が、政治的に公平性を欠くと判断した場合の「電波停止」に言及した。確かに総務大臣は電波停止の権限をもつ。しかし、放送の政治的公平をめぐる議論の場で、その権限の行使を強調したこと自体、放送局に対する一種の恫喝(どうかつ)であり圧力だ。

 放送法第4条の「政治的公平」の原則が政治の介入を防ぐための規定であることを踏まえ、政権のメディアに対する姿勢があらためて問われた。しかも現在に至るまで、高市総務相がこの発言を撤回していないことを忘れるべきではない。

 続いて3月には、NHK「クローズアップ現代」の国谷裕子キャスター、TBS系「NEWS23」の岸井成格アンカー、そしてテレビ朝日系「報道ステーション」の古舘伊知郎キャスターの3人が降板した。いずれも毀誉褒貶(きよほうへん)はあるものの、特定秘密保護法、安全保障関連法など、この国のかたちを変えようとする政治の流れの危うさを、テレビを通じて伝え続けた人たちであることは事実だ。

 こうした“もの言うキャスター”が時を同じくして画面から消えたことは、政権が目指すメディア・コントロールの“成果”でもある。実際に各局の報道番組はマイルドになり、たとえば南スーダンへの自衛隊「駆けつけ警護」などについても、本質に迫る報道が行われているとはいえない。来年は今年以上に、報道番組が何をどう伝え、また何を伝えないのかを注視していく必要がある。

最新の芸能記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    広島新井監督がブチギレた阪神藤川監督の“無思慮”…視線合わせて握手も遺恨は消えず

  2. 2

    ヤクルト村上宗隆「メジャー430億円契約報道」の笑止…せいぜい「5分の1程度」と専門家

  3. 3

    1年ぶりNHKレギュラー復活「ブラタモリ」が好調も…心配な観光番組化、案内役とのやり取りにも無理が

  4. 4

    回復しない日本人の海外旅行…出入国数はGWもふるわず、コロナ禍前の半分に

  5. 5

    故・川田亜子さんトラブル判明した「謎の最期」から16年…TBS安住紳一郎アナが“あの曲”を再び

  1. 6

    「リースバック」で騙される高齢者続出の深刻…家を追い出されるケースも

  2. 7

    眞子さん極秘出産で小室圭さんついにパパに…秋篠宮ご夫妻に初孫誕生で注目される「第一子の性別」

  3. 8

    田中圭にくすぶり続ける「離婚危機」の噂…妻さくらの“監視下”で6月も舞台にドラマと主演が続くが

  4. 9

    千葉工大が近大を抑えて全国トップに 「志願者数増加」人気大学ランキング50

  5. 10

    三山凌輝活動休止への遅すぎた対応…SKY-HIがJYパークになれない理由