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碓井広義メディア文化評論家

1955年長野県生まれ。慶應義塾大学法学部政治学科卒業。千葉商科大学大学院政策研究科博士課程修了。博士(政策研究)。81年テレビマンユニオンに参加。以後20年、ドキュメンタリーやドラマの制作を行う。代表作に「人間ドキュメント 夏目雅子物語」など。慶應義塾大学助教授などを経て2020年3月まで上智大学文学部新聞学科教授。専門はメディア文化論。著書に「倉本聰の言葉―ドラマの中の名言」、倉本聰との共著「脚本力」ほか。

ヒット作の罠とは無縁 米倉涼子「ドクターX」好調の要因

公開日: 更新日:

 米倉涼子(41)主演の「ドクターX~外科医・大門未知子~」が、“失敗しない”どころか今期も絶好調だ。それを可能にしているのは何なのか。

 ヒットシリーズが衰退する最大の原因は制作側の慢心だ。ストーリーはワンパターンとなり、出演者の緊張感が緩み、視聴者は飽き始める。シリーズ物こそ、現状維持どころか進化が必要なのだ。

 今期、第一の進化は「登場人物」である。アクが強く、アンチもたくさんいる泉ピン子を副院長役に抜擢。“権力とビジネスの巨塔”と化した大学病院で、院長(西田敏行)との脂ぎった対決が展開されている。また、米国の病院からスーパードクターとして戻ってきた外科医・北野(滝藤賢一)の投入も有効だ。

 さらに肝心の「物語」も進化している。先週の第7話では、当初、耳が聞こえない天才ピアニスト・七尾(武田真治)が患者かと思われた。だが、七尾は中途半端な聴力の回復よりも、自分の脳内に響くピアノの音を大事にしたいと手術を断る。

 大門はその過程で、七尾のアシスタント(知英)の脳腫瘍を見抜き、彼女の命を救っていくのだ。この回の寺田敏雄をはじめとするベテラン脚本家たちが、「毎回、大門が手術に成功する」という大原則を守りつつ、より豊かな物語を模索している。その努力がある限り、「ドクターX」一座の興行は続行可能だ。

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