<下>高齢者ドライバー事故報道は、本音をいえば迷惑な話

公開日: 更新日:

 最近は、高齢ドライバーによる事故が起こると、新聞やニュースで大々的に取り上げますよね。本音をいえば、迷惑な話です。僕も含め、車を運転している高齢者は少なからず、軽い罪の意識はあると思うんです。遠慮しながら運転しているんです。それでも事故が発生すれば、年齢と結びつけたがる。そんな昨今の報道を見て、同世代の友人は、運転しようとすると背中が緊張するって嘆いていました。いまの世の中の風潮、問題提起の仕方が、果たして正しいのか。山田監督は、そんなナイーブな問題を見事に喜劇の作品に落とし込んだ。改めて監督の脚本とセンスに感服しました。

 今作では、無縁社会における死についても問いかけています。西洋映画でも、ヒチコックなどが死体を扱った喜劇をつくっていますが、人間が根本的に抱えている死や生命の怖さをちょっとひねれば、笑いにつなげることができる。人間は本来、怖いことを忘れて笑いたくてしかたがないはず。年を重ねれば重ねるほどその思いは強まります。僕も死について考えますよ。もっとも小っちゃな人間なので、このままジタバタし続けるんでしょうね。この年になっても、いちびる自分をどこか俯瞰しながら、死ぬまで役者人生を全うしたいと思います。
(おわり)

▽はしづめ・いさお 1941年、大阪府出身。文学座、劇団雲を経て、75年に演劇集団円の設立に参加。以降、舞台・映画・テレビ等幅広い分野で活動。27日、主演作「家族はつらいよ2」(山田洋次監督、松竹系)が公開。

最新の芸能記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    米倉涼子“自宅ガサ入れ”報道の波紋と今後…直後にヨーロッパに渡航、帰国後はイベントを次々キャンセル

  2. 2

    「えげつないことも平気で…」“悪の帝国”ドジャースの驚愕すべき強さの秘密

  3. 3

    彬子さま三笠宮家“新当主”で…麻生太郎氏が気を揉む実妹・信子さま「母娘の断絶」と「女性宮家問題」

  4. 4

    アッと驚く自公「連立解消」…突っぱねた高市自民も離脱する斉藤公明も勝算なしの結末

  5. 5

    ヤクルト池山新監督の「意外な評判」 二軍を率いて最下位、その手腕を不安視する声が少なくないが…

  1. 6

    新型コロナワクチン接種後の健康被害の真実を探るドキュメンタリー映画「ヒポクラテスの盲点」を製作した大西隼監督に聞いた

  2. 7

    違法薬物で逮捕された元NHKアナ塚本堅一さんは、依存症予防教育アドバイザーとして再出発していた

  3. 8

    大麻所持の清水尋也、保釈後も広がる波紋…水面下で進む"芋づる式逮捕"に芸能界は戦々恐々

  4. 9

    “行間”を深読みできない人が急増中…「無言の帰宅」の意味、なぜ分からないのか

  5. 10

    万博協会も大阪府も元請けも「詐欺師」…パビリオン工事費未払い被害者が実名告発