著者のコラム一覧
碓井広義メディア文化評論家

1955年長野県生まれ。慶應義塾大学法学部政治学科卒業。千葉商科大学大学院政策研究科博士課程修了。博士(政策研究)。81年テレビマンユニオンに参加。以後20年、ドキュメンタリーやドラマの制作を行う。代表作に「人間ドキュメント 夏目雅子物語」など。慶應義塾大学助教授などを経て2020年3月まで上智大学文学部新聞学科教授。専門はメディア文化論。著書に「倉本聰の言葉―ドラマの中の名言」、倉本聰との共著「脚本力」ほか。

地元広島放送局が取り上げた「被爆死」「圧焼死」の実態

公開日: 更新日:

 鎮魂の8月。今年もまた何本もの終戦特集が放送されたが、6日のNHKスペシャル「原爆死~ヒロシマ 72年目の真実~」は、地元の広島放送局による力作だった。

 広島市が、昭和20年8月6日から現在まで続けてきた「原爆被爆者動態調査」がある。それは55万もの人たちが、どこで、どのように被災したのかを知る貴重な手掛かりであり、他に類を見ない「戦災ビッグデータ」だ。

 番組では、被災者ひとりひとりの死亡日、場所、死因、火災の状況、気象、原爆の絵、そして取材情報などを航空写真と重ねていく。すると、被災者がどのように命を奪われていったのかが浮かび上がってきた。「原爆による死」の可視化だ。思わず息をのむのは、倒壊した建物の下敷きとなり、生きながら焼かれる「圧焼死」の実態だ。

 当時16歳の女学生だった女性は、級友の助けを求める声を聞きながらも、迫る火災の炎に追われて置き去りにしたことを悔やみ続けていた。また即死を免れたものの原爆特有のやけどで命を奪われた人や、放射能を帯びた粉塵を吸い込んで内部被ばくした人など、解明されずにきた「原爆死」の多さに驚く。

 長引く苦痛をもたらす爆弾として、軍事目的より一般市民を苦しめる効果をもっていた原爆。番組が伝えた新事実をどう受けとめ、生かしていくかは私たち次第だ。合掌。

最新の芸能記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    武田鉄矢「水戸黄門」が7年ぶり2時間SPで復活! 一行が目指すは輪島・金沢

  2. 2

    生田絵梨花は中学校まで文京区の公立で学び、東京音大付属に進学 高3で乃木坂46を一時活動休止の背景

  3. 3

    未成年の少女を複数回自宅に呼び出していたSKY-HIの「年内活動辞退」に疑問噴出…「1週間もない」と関係者批判

  4. 4

    2025年ドラマベスト3 「人生の時間」の使い方を問いかけるこの3作

  5. 5

    2025年は邦画の当たり年 主演クラスの俳優が「脇役」に回ることが映画界に活気を与えている

  1. 6

    真木よう子「第2子出産」祝福ムードに水を差す…中島裕翔「熱愛報道」の微妙すぎるタイミング

  2. 7

    M-1新王者「たくろう」がネタにした出身大学が注目度爆上がりのワケ…寛容でユーモラスな学長に著名な卒業生ズラリ

  3. 8

    松任谷由実が矢沢永吉に学んだ“桁違いの金持ち”哲学…「恋人がサンタクロース」発売前年の出来事

  4. 9

    高市政権の積極財政は「無責任な放漫財政」過去最大122兆円予算案も長期金利上昇で国債利払い爆増

  5. 10

    農水省「おこめ券」説明会のトンデモ全容 所管外の問い合わせに官僚疲弊、鈴木農相は逃げの一手