批評家が厳選 優雅な寝正月にぴったりの映画・DVD特集
モリカケスパと政治スキャンダルが相次ぎながらも長期政権が居座り続け、実質賃金は下がる一方。にもかかわらず増税ラッシュまで予定されているから頭が痛い年の瀬。映画批評家の前田有一氏が寝正月を決め込んだ賢い諸兄に贈る優雅で知的でスリリングな映画&DVD!
■女優で見るなら松岡茉優
「ビジランテ」は「22年目の告白―私が殺人犯です―」の入江悠監督がオリジナル脚本で描くサスペンス。父親が死去すると、市議会議員の次男、デリヘル店長の三男のもとに30年間音信不通だった長男が現れる。相続するはずの土地が再開発利権の対象となったとたん、政界・裏社会から魑魅魍魎が群がる展開を、息苦しいほどの閉塞感とともに見せる。地方都市ならではのしがらみと、土地をめぐる強固な利権政治は森友加計問題をほうふつさせる。次男の妻を演じた元AKB48の篠田麻里子の意外なうまさが、濡れ場演技でも光っている。
女優で見るなら松岡茉優の初主演映画「勝手にふるえてろ」もおすすめ。芥川賞作家綿矢りさの原作恋愛小説を、映像ならではのミステリー的アレンジを加えて映画化。松岡は恋愛妄想をこじらせた非モテなイマドキ女子を好演する。生まれて初めて告白された同僚と、初恋相手の脳内妄想彼氏。そのどちらを選ぶかで延々と独り相撲する痛々しいキャラは、男が見ても爆笑必至。持ち前の美形なルックスと、オタクっぽい独白演技のギャップで、他に類を見ないコメディエンヌぶりを見せつけている。