名物テレビマン吉川圭三氏 ネット業界の悪しき構造に喝!

公開日: 更新日:

 大みそかの「ガキ使SP」(日本テレビ系)での、ダウンタウン浜田の黒塗りは“人種差別”、ベッキーの禊のタイキックは“いじめを助長”するなど昨年からバラエティー番組の演出を巡りネット上で非難が殺到する事例が急増している。コンプライアンスを重視する風潮はバラエティー番組にも浸透しているが、この状況について「ネットのテレビ叩きは8、9割がクズ」と批判する元日本テレビプロデューサーの吉川圭三氏(60)に話を聞いた。

 ◇  ◇  ◇

 ネットのテレビ叩きは8、9割がクズである、と僕は新聞の連載コラムで書きました。ウラを取ることもせずに、全く取材していない記事と的を射ていない批判ばかりです。浜ちゃんの「ビバリーヒルズ・コップ」の黒塗り問題について、日本テレビは謝罪はしませんでしたが、僕はそのスタンスに賛成です。このご時世ですから、コンプライアンスについては社内でも口酸っぱく言われているし、現場も一瞬立ち止まった末の決断だろうと推測します。

 僕は、制作したスタッフと演じる者がちゃんと黒人差別の歴史なり背景がわかっていれば前後関係にもそれはにじみ出てくるだろうし、それでいいと思う。それより議論にならずに一方的に正義を振りかざすことに問題がある。“批判すればカネになる”というネット業界の悪しき構図に侵されていることに気づいて欲しいですね。

 有名出版社でもネット記事となるといきなり様相が異なり、テレビ批判が載っている。担当編集者に問うと、「テレビ批評が一番PVを稼げるんですよ」と平気で言う。デジタル部門は広告料で運営し、食いぶちがテレビ批判。今までのビジネスモデルが通用しないデジタル部門には年長者が介入しない、というかサジを投げてしまっていて、若者に丸投げ状態です。

 出版不況下で着実に売り上げを上げて、社内の発言権も強くなってくると、ますますデジタルは年長者にはアンタッチャブルになり、どの出版社もデジタル部門の編集方針が「カネになるかどうか」だけという悲しい事態を招いています。

■情報発信する側のリテラシーが低下

 ネットは反射的に同調し、拡散、炎上する。まるで顔の見えない放火魔ばかりです。この“PV至上主義”がさらなる「リテラシーの低下」を招いています。「ワイドナショー」(フジテレビ系)がネットのまとめ記事をうのみにし、ジブリの宮崎駿氏がコメントしたかのように紹介、謝罪・訂正するという事件がありました。

 番組MCの松本人志さんが「今度あったら番組降りるで!」とまで言ったのは衝撃的でした。間違った情報を言わされてしまったら、タレントも共犯者です。テレビマンの差し出す構成台本が危ないなんて、情報を発信する側までリテラシーが低下してしまっている。しかも当事者が罪の重さを自覚していないのではないかという嫌な予感すらする状態です。

 あの話には後日談があって、番組関係者から宮崎さんの事務所に謝罪したいので、橋渡しをしてくれないかと頼まれたんです。でも宮崎さんの事務所からは「ネットも見ていないし、その話は知らないから謝罪する必要もないですよ」という“大人の対応”をされました。こんな対応ができるのはジブリだけで、普通はなかなかそうはいかないですが。

最新の芸能記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • 芸能のアクセスランキング

  1. 1

    山崎まさよし、新しい学校のリーダーズ…“公演ドタキャン”が続く背景に「世間の目」の変化

  2. 2

    ポンコツ自民のシンボル! お騒がせ女性議員3人衆が“炎上爆弾”連発…「貧すれば鈍す」の末期ぶりが露呈

  3. 3

    遠山景織子の結婚で思い出される“息子の父”山本淳一の存在 アイドルに未練タラタラも、哀しすぎる現在地

  4. 4

    ラウールが通う“試験ナシ”でも超ハイレベルな早稲田大の人間科学部eスクールとは?

  5. 5

    山崎まさよし公演ドタキャンで猛批判 それでもまだ“沢田研二の域”には達していない

  1. 6

    創価学会OB長井秀和氏が語る公明党 「政権離脱」のウラと学会芸能人チーム「芸術部」の今後

  2. 7

    田村亮さんが高知で釣り上げた80センチ台の幻の魚「アカメ」赤く光る目に睨まれ体が震えた

  3. 8

    Snow Man目黒蓮と佐久間大介が学んだ城西国際大メディア学部 タレントもセカンドキャリアを考える時代に

  4. 9

    草間リチャード敬太“全裸騒動”にくすぶる「ハメられた」説…「狙った位置から撮影」「通報が早い」と疑問視する意見広がる

  5. 10

    クマが各地で大暴れ、旅ロケ番組がてんてこ舞い…「ポツンと一軒家」も現場はピリピリ

もっと見る

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    日本ハム新庄監督がドラフト会議出席に気乗りしないワケ…ソフトB小久保監督は欠席表明

  2. 2

    佐々木麟太郎をドラフト指名する日本プロ球団の勝算…メジャーの評価は“激辛”、セDH制採用も後押し

  3. 3

    遠山景織子の結婚で思い出される“息子の父”山本淳一の存在 アイドルに未練タラタラも、哀しすぎる現在地

  4. 4

    小嶋陽菜はブランド17億円売却後に“暴漢トラブル”も…アパレル売れまくりの経営手腕と気になる結婚観

  5. 5

    星野源「ガッキーとの夜の幸せタイム」告白で注目される“デマ騒動”&体調不良説との「因果関係」

  1. 6

    ドラフト目玉投手・石垣元気はメジャーから好条件オファー届かず…第1希望は「日本ハム経由で米挑戦」

  2. 7

    今秋ドラフトは不作!1位指名の事前公表がわずか3球団どまりのウラ側

  3. 8

    「えげつないことも平気で…」“悪の帝国”ドジャースの驚愕すべき強さの秘密

  4. 9

    「仮面の忍者 赤影」で青影役 金子吉延さんは週5日の病院通いで「ダイジョーブ?」

  5. 10

    また日本中がブラック企業だらけになる…高市首相が案の定「労働時間規制」緩和指示の醜悪