名物テレビマン吉川圭三氏 ネット業界の悪しき構造に喝!

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ネットはテレビ批判で食べている

 ベッキーさんの禊のタイキックも「叩き芸」であって、やる人と受ける人、演出側の3者の共同作業。本当は痛くないけれど、音が大きくて、痛そうに見せている“エンタメ”です。それを鬼の首を取ったかのように批判し、ネットはテレビ批判で食べている。

 ところが残念なことにテレビがネット批判をしようとしても成功例がない。ネット側の論客といえば堀江貴文氏や2ちゃんねるのひろゆき氏で、ネットに疎いテレビや活字の旧メディア人種では言い負かされてしまいます。テレビ側の論客にあたるビートたけしさんなどは意外にネットの本質を見抜いているが、同じリングで戦う気はない。これはメディアの質が違うのだから議論にならないのは当たり前だと思います。

 最近ではBPO(放送倫理・番組向上機構)を極端に恐れる官僚主義的なテレビマンまで増えている。そもそもBPOは、フジテレビ系列の「あるある大事典」の「納豆ダイエット」特集にやらせ疑惑が起こり、政府から咎められる前に自主的にテレビ業界側で倫理を守る機関をつくったのであって、いわば身内。それを「BPOに注意される」とビビるのは筋違いです。

 TBSの「水曜日のダウンタウン」は6回ぐらいBPOに指摘されていますが個人的には根性あるなと感心しますね。昔は他にメディアがなかったし、クレームが電話だけだったからか苦情を恐れなかったですね。それがメールに変わり、活字に絶対的な信頼を持つ時代の人間はメールに動揺し、官僚的な事なかれ主義がテレビマンにはびこってしまった。おかげで企画力も衰えてしまった。

■「安全第一でいいのか」

 僕の時代は「ゲバゲバ90分」で一世を風靡した井原高忠さんに「クロサワの真似などするな、TV屋はTV屋の流儀でいけ」と言われて育ったものです。結果がどうなるのかわからないからやってみる。フルスイングでやってみることができるのがテレビだった。ところがみんな「〇〇っぽい」類似品を作る、安全第一でいいのか。僕の古巣・日本テレビでは、フルスイングして失敗するようなことがあれば確かに一時は現場から外されます。でも、数年たって現場に戻ったときに力を発揮するやつらもたくさんいる。

 小さくまとまってはテレビじゃない、テレビは基本的にドメスティックな面白さを持つ娯楽でもあります。繰り返しになりますが、過度なネットの声に臆することなく、デリケートなネタをやるときは制作者自身がそれを勉強して、表現の限界を極めていってほしいと思います。

▽よしかわ・けいぞう 1957年、東京都生まれ。82年に日本テレビに入局、「世界まる見え!テレビ特捜部」「恋のから騒ぎ」「1億人の大質問!? 笑ってコラえて!」などを手掛ける。現在、ドワンゴエグゼクティブプロデューサー。

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