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てれびのスキマ 戸部田誠ライタ―

1978年生まれのテレビっ子ライター。最新著「王者の挑戦『少年ジャンプ+』の10年戦記」(集英社)、伝説のテレビ演出家・菅原正豊氏が初めて明かした番組制作の裏側と哲学をまとめた著者構成の「『深夜』の美学」(大和書房)が、それぞれ絶賛発売中!

「淘汰」に無抵抗主義貫く インパルス板倉はガンジー芸人

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 しかし、「はねるのトびら」は12年に終了してしまう。実力派であるインパルスにはその後も番組出演の話はもちろんあった。だが、初回に呼ばれても2回目以降、板倉が呼ばれなくなることが多かった。

「堤下をイジるのを初回に呼ばれたときにやるんですよ。そうすると、次の回からMCがそれまんまやるんですよね。だから、自分のポジションがない。で、こっちが呼ばれない。何これ、みたいな。つくった人に対する敬意みたいなの、一切ないなテレビって」(同前)

 そうして板倉はどんどん「腐って」いった。一方で「お笑い」とは程遠い仕事も来る。自分は飯食って「おいしい」、犬見て「かわいい」、アトラクション乗って「怖かった」っていうために芸人になったわけじゃない、と小籔千豊に相談した板倉は返ってきた言葉にハッとした。

「おまえがたとえば映画を一本撮る。警察官の役をやってほしくて呼んだ役者がいる。その役者が『監督違うんですよ、俺、殺人鬼の役をやりたいんですよ』と言ってるようなもんやで」(同前)


 いかにスタッフの気持ちを考えてなかったか、と板倉は悟った。けれど、それをやろうとは思わなかった。

「それでも、やっぱりお笑いだけをやりたいって人は淘汰される。俺は淘汰されることに抵抗してない」(同前)

 まさにガンジー芸人。板倉の「腐り」はもはや発酵し熟成の域に達し、いい味わいを醸し出し始めている。

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