北村総一朗さん 初日前夜に韓国大統領暗殺で戒厳令が敷かれ

公開日: 更新日:

 1997年、ドラマ「踊る大捜査線」(フジテレビ系)の警察署長役で61歳でブレーク。トボケた演技が注目され、その後はバラエティーでも活躍。だが、原点は新劇のイケメン俳優だった。

 これは今も所属している「劇団昴」での公演です。79年10月、韓国ソウルでやった舞台です。当時44歳。題名は「海は青く深く」という、テレンス・ラティガンの芝居で、僕が主役、隣にいるのは鳳八千代さんという元宝塚歌劇団の女優さん。演じている時は芝居に集中していたけど、それ以外ではみんな、戦々恐々としていたんですよ。

 というのは、初日の前夜、当時の韓国大統領の朴正煕が暗殺されたんです。僕ら劇団員は「ザ・プラザソウル」という暗殺現場の目と鼻の先にあるホテルに宿泊していました。韓国中に戒厳令が敷かれ、街は戦車がゴーッと走って騒然とした雰囲気でした。僕らはホテルに閉じこもって「今にも、こっちに向けて撃ってくるんじゃないか」とウワサしたりしていました。そもそもソウル公演が実現したのは「昴」を率いていた、シェークスピアの翻訳で有名な福田恆存先生が朴正煕と交流があったからでした。

 翌朝、ホテルから公演会場の世宗文化会館に到着すると、自動小銃を持った軍人に迎えられ、ロビーや廊下にも軍人が待機していて……。後にも先にもこんな緊迫した状況で芝居をしたことはありません。僕らは戦争を経験した世代でしょ。戦争って、気がついたら始まっちゃってたっていう要素があるから、危機感がありました。1週間ぐらいの予定を2日で切り上げて帰国。これが初めての外国経験でした。

 二枚目路線だったかって?いやいや、劇団には他に正統派二枚目がいたし、映画俳優なんか劇団の二枚目とは比べものにならないくらいの二枚目ですから。高知から舞台やりたくて上京してきて、東京で現実を思い知らされましたよ。

 最初は文学座の研究生でね。同期には草野大悟や岸田森、樹木希林、小川真由美……みんなテレビや映画で売れていったのに、僕はなかなか芽が出なくてね。ヤキモチを焼いたし、焦りや葛藤もありました。

最新の芸能記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    梅野隆太郎は崖っぷち…阪神顧問・岡田彰布氏が指摘した「坂本誠志郎で捕手一本化」の裏側

  2. 2

    阪神に「ポスティングで戦力外」の好循環…藤浪晋太郎&青柳晃洋が他球団流出も波風立たず

  3. 3

    阪神・佐藤輝明が“文春砲”に本塁打返しの鋼メンタル!球団はピリピリも、本人たちはどこ吹く風

  4. 4

    自民両院議員懇談会で「石破おろし」が不発だったこれだけの理由…目立った空席、“主導側”は発言せず欠席者も

  5. 5

    広末涼子「実況見分」タイミングの謎…新東名事故から3カ月以上なのに警察がメディアに流した理由

  1. 6

    参政党のSNS炎上で注目「ジャンボタニシ」の被害拡大中…温暖化で生息域拡大、防除ノウハウない生産者に大打撃

  2. 7

    国保の有効期限切れが8月1日からいよいよスタート…マイナ大混乱を招いた河野太郎前デジタル相の大罪

  3. 8

    『ナイアガラ・ムーン』の音源を聴き、ライバルの細野晴臣は素直に脱帽した

  4. 9

    初当選から9カ月の自民党・森下千里議員は今…参政党さや氏で改めて注目を浴びる"女性タレント議員"

  5. 10

    “死球の恐怖”藤浪晋太郎のDeNA入りにセ5球団が戦々恐々…「打者にストレス。パに行ってほしかった」