鴻上尚史氏インタ 生き苦しさ解消には「好きなもの」を

公開日: 更新日:

 劇作家の鴻上尚史(61)の書き下ろし舞台「地球防衛軍 苦情処理係」がまもなく開演する(東京&大阪公演)。思わずニヤリとさせられるタイトルだが、作品に込めた思いとは何か。稽古場を訪ねた。

  ◇  ◇  ◇

 ――構想は何年も前からあったそうですね。

「最初は、かつて『第三舞台』のスタッフだった日テレのディレクターから話があったんです。しかし結局、その企画はポシャってしまった。その後、僕の中にタイトルだけが強烈に残っていて、ストーリーが勝手に浮かんできたって感じです。当時とは全く違う話なんだけど、彼の許可を得てタイトルを使わせてもらったんです」

 ――チラシには「絶望と希望の物語」とあります。

「スマホを手にしたことで、今は誰もが簡単にクレームを言える時代になりました。『地球防衛軍』も怪獣の侵略から人類を守るために必死で戦ってるはずなのに、クレームが殺到して悩むわけです。作品の中でも触れていますが、クレームには3種類あります。ひとつは『ホワイト』。これはまっとうなクレームです。例えば“地球防衛軍のミサイルで私の家が壊れたので補償して欲しい”とか。もうひとつは『ブラック』。これは“家がミサイルで壊される映像を見てたら精神的におかしくなったから金よこせ”とか。つまり金品目当てです。それから僕は『レッド』と言ってますが、要するに『自分の話を聞け』と言いたいだけのクレーム。デパートを定年退職して時間を持て余している老人が、デパートを回って接客や陳列に対して難癖を付けているような。それから“地球防衛軍が怪獣をわざと自分の家に導いている”と言い出す人とか」

 ――「レッド」のクレームは厄介ですね。

「『レッド』はまっとうな対処法ではどうしようもないわけです。スマホによって自意識が拡大し、“誰もが何かを主張したくなる時代”になったと思うんです。が、自分を主張するときに、単に見た映画の感想を投稿したところで、それ以上の鋭い分析をする人が出てきたりして、自分のうんちくは否定されてしまったりする。しかし、苦情というか『正義の言葉』に対しては誰も否定できないんですよ」

 ――本人の自意識は満たされたとしても、多くの人が「正義の言葉」を振りかざす社会は生き苦しそうです。

「生き苦しさは加速していると思います。それは一人一人が加速させているんだけど、それに気付いてないというか。どこかで“みんなもうちょっとノンキでいいんじゃないの?”と立ち止まって考える必要があると思います。これはなかなか難しいですけどね。今どきは、少しでも間違った発言をしたり、事実誤認があったりすると、すぐググられますからね。

最新の芸能記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • 芸能のアクセスランキング

  1. 1

    立花孝志容疑者を"担ぎ出した"とやり玉に…中田敦彦、ホリエモン、太田光のスタンスと逃げ腰に批判殺到

  2. 2

    矢沢永吉&甲斐よしひろ“70代レジェンド”に東京の夜が熱狂!鈴木京香もうっとりの裏で「残る不安」

  3. 3

    実は失言じゃなかった? 「おじいさんにトドメ」発言のtimelesz篠塚大輝に集まった意外な賛辞

  4. 4

    国分太一が「世界くらべてみたら」の収録現場で見せていた“暴君ぶり”と“セクハラ発言”の闇

  5. 5

    長女Cocomi"突然の結婚宣言"で…木村拓哉と工藤静香の夫婦関係がギクシャクし始めた

  1. 6

    【武道館】で開催されたザ・タイガース解散コンサートを見に来た加橋かつみ

  2. 7

    男子バレー小川智大と熱愛報道のCocomi ハイキューファンから《オタクの最高峰》と羨望の眼差し

  3. 8

    菊池風磨率いるtimeleszにはすでに亀裂か…“容姿イジリ”が早速炎上でファンに弁明

  4. 9

    《もう一度警察に行くしかないのか》若林志穂さん怒り収まらず長渕剛に宣戦布告も識者は“時間の壁”を指摘

  5. 10

    Snow Manライブで"全裸"ファンの怪情報も…他グループにも出没する下着や水着"珍客"は犯罪じゃないの?

もっと見る

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    高市政権の物価高対策「自治体が自由に使える=丸投げ」に大ブーイング…ネットでも「おこめ券はいらない!」

  2. 2

    円安地獄で青天井の物価高…もう怪しくなってきた高市経済政策の薄っぺら

  3. 3

    現行保険証の「来年3月まで使用延長」がマイナ混乱に拍車…周知不足の怠慢行政

  4. 4

    ドジャース大谷翔平が目指すは「来季60本15勝」…オフの肉体改造へスタジアム施設をフル活用

  5. 5

    実は失言じゃなかった? 「おじいさんにトドメ」発言のtimelesz篠塚大輝に集まった意外な賛辞

  1. 6

    佐々木朗希がドジャース狙うCY賞左腕スクーバルの「交換要員」になる可能性…1年で見切りつけられそうな裏側

  2. 7

    【武道館】で開催されたザ・タイガース解散コンサートを見に来た加橋かつみ

  3. 8

    “第二のガーシー”高岡蒼佑が次に矛先を向けかねない “宮崎あおいじゃない”女優の顔ぶれ

  4. 9

    二階俊博氏は引退、公明党も連立離脱…日中緊張でも高市政権に“パイプ役”不在の危うさ

  5. 10

    菊池風磨率いるtimeleszにはすでに亀裂か…“容姿イジリ”が早速炎上でファンに弁明