庄内町立図書館(山形県東田川郡)水彩画と本に囲まれる木造空間
山形県北西部、雄大な庄内平野に広がる米どころの庄内町。その中心部に2024年春、「絵のある図書館」をコンセプトに掲げる新たな文化拠点・庄内町立図書館が誕生した。
“しずく形”の平屋建築は、外から見ると、緩やかな勾配屋根を載せた落ち着いたたたずまい。けれども中に入れば、印象は一変。天井は両端から中央へと高さを増し、それに沿って木材が放射状に組まれている。立体的な造形が空間に奥行きと広がりをもたらし、開放感あふれる雰囲気を演出する。
館長の佐藤晃子さんが言う。
「木材はすべて山形県産を採用しており、なかでも受付カウンターなど利用者がよく触れる場所には、庄内町産の木材を優先的に使用しています。書架やテーブル、椅子についても木のあたたかみや質感を大切に考えました。どこからでも木材と本が目に入り、さながら『本の森』にいるように感じられるはずです」
ところで、「絵のある図書館」とはいったい何か。
同館はもともと、隣接する「内藤秀因水彩画記念館」とともに整備された一体型の施設だ。両館は現在も廊下でつながっており、無料で自由に行き来できる。今回の整備では、図書館が新築される一方、水彩画記念館は展示機能の拡充などを含むリノベーションが施された。
「改築を機に、いっそう連携を強めております」と佐藤さんが続ける。
「館内には展示コーナーを設けたほか、本棚の中に絵画を埋め込めるような特別の額縁を、計6カ所に設置しています。季節やイベントに合わせて展示内容を選んでいるため、思わぬ出合いがあるかもしれません。また、夏から秋にかけて開催する『絵本原画展』は、絵本と絵画の世界観を融合。まさに当館の特徴を体現したイベントです。おはなしの世界とアートの世界を、図書館と水彩画記念館の双方を行き来しながら感じてほしいです」