「物忘れ外来」を受診したらどんな検査が行われるのか
認知機能の低下にいち早く気づくのは、当事者本人です。認知機能の状態は、健常、SCI(主観的記憶障害)、MCI(軽度認知障害)、認知症の4段階に分類されますが、SCIの段階では本人のみが物忘れを自覚しており、他人は気づいていません。MCIの中盤を過ぎたあたりから、他人が少しずつ違和感を覚える感じでしょうか。
物忘れが心配になったら早い段階で医療機関を受診してほしいと思います。そこで今回は、初診時にどんな検査が行われるかを紹介しましょう。受診をためらっている方の第一歩が、少しでも軽くなればいいな、と考えています。
行われる検査は主に、問診、認知機能テスト、血液検査、画像検査です。認知機能テスト、これは記憶力や判断力を測定するものになりますが、たくさん種類があり、その中でよく使われているのが「MMSE」もしくは「長谷川式」と呼ばれるものです。正確には、「ミニメンタルステート検査」「長谷川式簡易知能評価」といいます。どちらも10~15分程度の検査です。
血液検査は、アルツハイマー型認知症やレビー小体型認知症といった、脳に原因がある認知症「以外」の病気を調べる目的で行います。甲状腺機能低下症、肝臓病、腎臓病といった体の病気、またビタミンB群(特にB1、B12、葉酸)の不足は認知機能低下を引き起こします。
体の病気や栄養素の不足が原因であれば、それらの治療で認知機能が回復する可能性が高いのです。
画像検査では、MRI、CT、脳血流SPECT(スペクト)、アミロイドPETが代表的です。初診時にMRIとCTは両方やる必要はなく、MRIだけで十分です。MRIの方が解像度が良いので、脳の動脈硬化、動脈瘤、脳の萎縮などを調べられます。
MRIでわかるのは、脳の形状の変化です。MRIで異常がわかれば、脳血流SPECTで血液の流れの分布を見ます。血液の流れが悪くなっている場所は、神経細胞の働きが悪くなっている場所であり、それがどこかによって、アルツハイマー型やレビー小体型などの認知症の種類を推測できます。
また、今はアミロイドPETが保険適用となっているので、脳血流SPECTよりも直接的にアルツハイマー型の原因物質アミロイドβの蓄積を調べることが可能なアミロイドPETを実施することが多くなっています。